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出会う
俺、細くて色白な可愛い系が好みだったはずなのに。
まさかこんな、雄々しい男前なお兄さんにピンとくるなんて。
深い緑色のツナギを着ていても分かる、逞しい肉体。
白いタオルを頭に巻いたその男は、鼻が高くて眉が短くて、見るからにヤンキー上がりっぽくて。
なのに身体のわりには小さな顔と、少し垂れ下がった目が印象的だった。
一目見た瞬間、周りの時間が止まったかのように、俺の目は彼しか映さなくなった。
目の前を横切る車も、自分を追い抜いていく通行人も、当然外野は目に入らない。
こんなふうになったのは、今まで色んな人物を見てきたなかでは初めてのことだった。
あまりに凝視しすぎたせいか、道路を挟んでこちら側の存在に気付いた彼が、胡乱げに俺を流し見る。
視線が合致しギクリとするも、その瞳さえ綺麗で、今にも逆上されそうな芯のある強く儚い眼差しに、さらに目を奪われた。
「──見つけた、原石」
「へ?」
「行こうっ、あの人に声かけるよ……!」
「ちょっ、ちょっと待って下さいよ……!」
自分に対して戸惑ったのは言うまでもなかったけど、こんなにも勘のようなものが働いたのは初めてだったから。
この機会を逃してはいけないと、直感でそう思った。
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