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物足りない

 一番緩んだときを狙ったせいで、ぬちぬちと音を立てながらも最奥まで入ってしまったピンクの玩具。  唾液で濡れた唇に再びかぶりついて、小箱みたいな持ち手にあるスイッチを、カチリ、親指で切り替えた。 ──…ヴヴヴヴ 「っい、ぁ──……ッ、アぁ、んっ、やだ、とめろ、とめ、てぇ……っ!」 「これ、痛い?」 「ッたくな、けど、いやだっ、それ、嫌ぁっ!」 「そっかぁ」  バイブの底面を持っている俺は、彼を責め立てるそれの角度を変え、ぐいぐいと前立腺を穿つ。  人間のように限界がない機械は、電池が切れるまではほぼ永久的に振動し続け、好きなところを好きなだけ刺激してくれる。  玩具のほうが好きっていうネコも多いくらいだ。  けどまあ、機械的で無機質なオモチャ故に、足りないものもあるわけで。 「や、ぁっ、変に、なるッン、あ……っ」 「うん、いいよ。もっと変になって。はしたない格好も浅ましい喘ぎ声も、我慢しないで……」 「やっあ、ぁン、んんっ!」  囁く声や湿った吐息、熱い肌の感触や匂いは、人だからこそ感じられるもの。  だから俺は、機械に加えてそれをプラスする。  今以上にずっと、彼に乱れてもらうために。 「やっだぁ、そこ、離してっ、ひ、ぁう、ぁぁあ゙……っ!」 「……離していいの? 本当に?」  彼の台詞に、バイブを持つ手を浅く引き抜き、器用に動かす。  こりこりとしたシコリの、すぐ近く。シコリではないそこに、先端をぐっと押し当てた。  途端、テツヤさんの嬌声が大人しくなる。  意識が射精に向かって、集中するための余裕が出来たんだ。  それじゃあ面白くない。  てか、まだイかせる気はないし。 「あっ、ぁ……、んぅ……ッ」 「……ね、キスしよ?」 「んぅ……? むぁ、う……ンっ」  唇を啄んで、隙間に舌を差し入れると、彼は少し虚ろな目をして応えてくれた。  両腕がゆっくりと俺の背中にまわり、遠慮がちに服を掴む。  その、少しずつ行為に没頭していく様子に胸が高鳴る。 「っン、ん……、だめ、やだ、」 「……ん、なにが?」 「そこ、やっぱ、いゃ……」  力なく首を振った彼に、唇を離して優しく問いかけるが目は合わせてくれず、顔を横に背けられる。  身体はさらに快楽を貪ろうとするのか、前立腺に当たるか当たらないかの中途半端な場所に位置する微弱な刺激じゃ、物足りなくなってきたらしい。

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