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『なんですか?あの空気。』
『なにが?』
『いやいや、支店長と二間さん何かあったんですか?』
ズルズルとラーメンをすすりながら三好が聞く。
話していいものなのか迷い、俺は黙ったままラーメンをすすった。
『なにかあったんですね…』
悟った三好が言う。
『…』
『あの二人、鈴木さんのこと好きですよね?』
『ブッ!!!ゴホッゴホ…!!』
三好の口から出た言葉に思わずラーメンを吹き出した。
『大丈夫ですか!?水飲んで、水!!』
慌てて俺におしぼりと水を渡して、三好が笑い出す。
『鈴木さんわかりやす。』
『ゴホッ…なぁ、おかしいと思わねぇ?』
『何がですか?』
『男が男を好きだなんて。』
『別に。』
『えっ?おかしいと思わねぇの?』
『はい。好きになっちゃったんだから仕方が無いですよね?』
あっ…なるほど。
そういう考えね。
『お前思ってた以上に大人だわ。』
『子供だと思ってたんですか?』
笑いながら三好が言う。
『思ってた。』
俺も一緒になって笑う。
『俺もね、好きですよ?』
『なにが?』
『鈴木さん。』
『は?』
『俺も鈴木さん好き。』
『先輩として?』
『いや、恋愛対象として。』
マジ?
まさかの告白に俺は戸惑いを隠せない。
『ちょっ…冗談やめて。』
『いや、本気で。』
さっきとは違う真剣な目に背筋がゾクリとした。
『お前、ゲイ…なの?』
『違いますよ?彼女いたことあるし。』
『じゃぁなんで?』
『俺も知りたいですよ。さっきも言いましたけど、好きになっちゃったんですもん。仕方ないですよ。』
そう言いながら、三好が少し恥ずかしそうに俯く。
『なぁ、人として好きってことと、恋愛対象としての好きってどう違うの?』
気付くと、俺はそんな質問をぶつけていた。
『んー。正直わかりませんね。俺も最初は鈴木さんのこといい先輩だな〜としか思ってなかったんですけど、ある日突然ビビッと来て、自分の気持ちを確かめるにはこれしかないなと思ってやってみたら成功して…』
『やってみた?ってなにを?』
『オナニーです。鈴木さんでヌケたんすよ、俺。』
『………』
もう言葉が出なかった。
『これが一番手っ取り早い方法かな?って思って。』
『お前なぁ…』
『いや、でも本気で鈴木さんのこと好きなんですよ!!』
ガタンッと勢い良く立ち上がり三好が叫んだ。
『シィー!!!座れ座れ!!!ここ、公共の場!!』
すみません…と頭を掻きながら三好が席に着く。
『でもね、本当に好きなんです。鈴木さんのこと。』
『…』
『俺じゃダメですか?』
『いや、ダメというかなんというか…』
またしても男からの告白。
なんなの?俺。
なんかフェロモン出てる?
男専用の…
『すぐ返事くださいとは言わないんで…考えてもらえませんか?』
『考えるって?』
『俺と付き合うかどうか。』
『付き合うって男同士で何すんの?』
『俺もね、わからなくて色々ネットで調べてみたんですよ…男女ですることとあまり変わりませんよ?』
『いやいや、男女とって…』
『デートはもちろんのこと、キスだってするし、エッチだって…』
『はぁ!?』
『いや、俺も詳しくはわからないんですけど、書いてあったんですもん!!』
『マジか…』
正直驚いた。
エッチって…
えっ?コキ合いとか?
さすがにラーメン屋でそこまでは聞けず、この話はここで終わった。
『俺から誘ったのに、奢ってもらっちゃってすみません。』
『いいよ。後輩に奢ってもらう趣味ねぇし。』
『やっぱ鈴木さん好き。』
『いや、あんまり言うなって。』
一度自分の気持ちをオープンにした三好はことあるごとに俺に好き好き言ってきて…
正直嫌な気はせず、なんだか可愛いというかなんというか…
事の始まりは、一ノ瀬支店長に男に興味はあるか?なんて聞かれたことだ。
全然興味なんてなかったのに、意識すればするほど興味というか気になって…
しかも一気に三人の男に言い寄られちゃ考えたくなくてもそっちの道も考えてしまうというか…
『じゃ、失礼します!!』
『はいよ。おやすみ。』
『おやすみなさい!!』
元気よく挨拶をして三好が頭を下げる。
それに手を上げて、俺は家へと帰った。
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