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『お邪魔します。』
『どうぞ。散らかってるけど。』
『鈴木さんちってほんといい匂い。』
機嫌は直ったのか、ニコニコしながら三好が言う。
『なんだそれ。この前も言ってたよな。』
『はい。鈴木さんの匂い好きなんで。』
またしてもクンクンと犬の様に匂いを嗅ぐ三好がおもしろい。
『あれ?お前もなんかいい匂いすんな。』
クンクンと三好の匂いを嗅ぐと、ふわりと甘い匂いがした。
『あっ!!シャワー浴びて来たんですよ。時間あったし。』
『そっか。』
俺もシャワー浴びたいなぁ〜なんて思いながら三好が買って来てくれた飲み物を袋から取り出す。
『鈴木さん、そんなのしか買えなかったんですけどよかったです?』
『ん?あ、十分十分。ありがと。』
ツマミも全部出し切ってリビングの机の上に並べた。
『カンパーイ!!!』
『乾杯。ってか何に?』
『鈴木さんと飲んでることに。』
『ほんと二人で飲むの初めてだよなー。俺、お前飲めないと思ってたからな。』
『それは、この前も言ったじゃないですか。』
『そうだったな。お前ズル賢いな。』
『それほどでもないです!!』
『いや、褒めてないから!!』
なんて笑いながら時間が過ぎた。
『酔い回ってくる前にシャワー浴びて来ていい?』
『あっ、いいですよ〜。いってらっしゃぁい。』
なんだかご機嫌な三好を一人置いて、俺はシャワーを浴びることにした。
三好と二人で酒を飲むのは初めてだが楽しい。
飲むと愚痴派なやつがいるが、三好はそんなのではなく笑い上戸というか、常に何でも可笑しくて笑ってしまうと言った感じだ。
泣き上戸とかよりかはよっぽどいい。
さっとシャワーを浴び、あまり一人で待たせるのは申し訳ないと濡れた髪をタオルで拭きながらリビングへと向かった。
『すまん。』
『いいですよ〜。続き飲みましょ!!』
買って来てくれた缶ビールや酎ハイは底をつき、うちにあった焼酎を飲む。
『三好、お前飲み過ぎてない?大丈夫か?』
『大丈夫ですよ!!ってか、鈴木さん髪濡れてる。』
『えっ?あっ、急いでたから。』
『急いでた?』
『いや、お前一人で待たせるの悪いじゃん。』
『…風邪ひきますよ。こっちきて…』
『えっ!!ちょっ…』
三好にグイッと腕を引かれ、頭に被せておいたタオルで髪を拭かれた。
『俺が拭いてあげます。』
なんだか満足そうな三好の顔を俯きながらも上目遣いで見上げる。
なんだよ…なんかドキドキすんな…
変な気持ちになるのを飲んでいるせいにして、頭を拭いている三好の腕を掴んだ。
『もういいから。自分で拭けるし…』
『鈴木さん…』
名前を呼ばれて三好の顔を見た瞬間…
唇を塞がれた。
『ん!?』
三好は、驚きのあまり動けない俺から唇を離すと真っ直ぐに俺を見た。
『鈴木さん…俺ね、本当に鈴木さんのことが好きなんです。男同士への興味本位とかそんなんじゃなくて、本当に本当に鈴木さんが好き。俺じゃ…ダメですか?』
『三好…』
『今ね、キス以上のことも本当はすごくしたいけど、俺も無理矢理は嫌だから…』
なんだか胸を打たれた気がする。
同情とかそんなんじゃなくて…今、素直に三好とキスがしたいと思った。
『……キスだけなら…』
『えっ?』
『キスだけなら、もう一回したいかも…』
俺相当酔ってんなーなんて頭で考えながら三好を見つめる。
『キスだけで我慢できなかったらどうしましょ?』
『…我慢しろ。』
俺の頬にそっと手を添えて、三好が唇を押し当てる。
チュッと触れるだけのキスを何度も繰り返し、後頭部を固定されると同時に三好の舌が俺の唇の間をこじ開ける。
強引に差し込まれた舌は熱を帯びていて、すごく熱い。
溶けてしまいそうなお互いの舌を絡め合い、激しさのあまり頭に被っていたタオルがハラリと落ちた。
『ん…ふ……ん…』
クチュとかチュッとか…いやらしい音が部屋に響く。
『ん…ハァ…ハァ…』
最後に俺の唇を啄ばむように三好の唇が離れ、肩で息を整える。
こないだのキスとは違う、熱くて濃厚なキス。
呼吸を整えるのがやっとで、なかなか話し出すことができない。
コイツはやはり床上手なのかもしれないな…なんて思ってしまうようなキスに頭がクラクラする。
強引だけど優しくて…
本当に溶けてしまいそうだった。
何がキスだけで我慢しろだよ…
自分がこんなになってるくせに。
節操のない自分の息子を宥めながら口の端から漏れた唾液を手の甲で拭った。
『鈴木さん…』
『あ?あ、悪りぃ。酔った勢いで悪ノリしすぎた。』
『いや、そんなことじゃなくて…』
『ん?なに?』
『俺…やっぱり我慢できません!!』
自分の下半身を抑えながら三好が叫んだ。
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