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第61話

「…お願いします、俺がオメガだって事、誰にも言わないでください…っ。」 オメガだとバレたら男からでも性的な目で見られる。それを警戒してのことだろう。 もちろん、オメガだと分かったところで言いふらす気などなかった。 「うん。言わないよ。」 「よかった…、バレたのが真咲さんで良かった…。」 心底ほっとしたように胸をなで下ろす夜白くん。 何故かその表情に惹かれた。 『でも、俺はαだよ。』 「え……?」 この瞳、この表情。 手に入れたいものが、初めて出来た気がした。 「でも、変なことはしない。手も出さない。だから、友達になろうよ。」 きっと、こう言わなかったら逃げられていただろう。 「手を出さない」、この言葉にほっとしたようで、夜白くんは「俺でよければ」と言ってくれた。 「じゃあ、また連絡するよ。空いてる日、言ってくれたら助かる。」 「分かりました。じゃあ続きはまたアプリで。」 「うん、俺はもう帰るよ。夜白くんも薬飲まなきゃいけないし帰った方がいいんじゃないかな?」 先ほど夜白くんから香ったのはオメガのフェロモンだ。 ということは、まだ番はいないのか…。 それに、フェロモンが香るということはきっとヒートが来たのだろう、薬を飲まなきゃ身体も辛いだろうし、他のやつにもバレてしまう。 それは…困るなぁ。せっかく興味が湧いたのに他の奴に取られるのは気に食わない。 「はい…。俺も薬だけ飲んでから帰ります。」 「あ、せっかくだし送っていこうか?オメガを1人にするのは不安だ。」 こう申し出たが、承諾される事もなく。 「いえっ、大丈夫です。俺ん家すぐそこなんで。」 緩く断られた。 「そっか。…それじゃ、また今度会おう。今日は本当にありがとう。助かった。」 「そんな…! こちらこそありがとうございました。はい、また今度。」 そう言って、笑顔のまま夜白くんと別れた。

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