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First Time

満員に近いエレベーターに身体を入れ込むと、横にいる人がオレから視線を外さずにじっと顔をむけている。だいたいエレベーターとか視線を合わせないようにしない? チラッとそっちをみるとその人は耳まで真っ赤になって俯いた。なんだ、オレのファン? ライブハウスのある階で降りるとその人も降りてきた。やっぱりそうか。気安く声かけたり触ってくるやつもいるけどなんだか控えめだな。 「もしかしてライブに来てくれた人?」 「あ、そう……です」 「ありがとね、楽しんでって!」 オレはその日から一番後ろの壁際に立つその人を見つけるのが楽しみになった。 何してる人なんだろ? 年上かな? 静かに聴いてるだけなのか。 いつも一人なのか。 なんかオレのファンぽくない。 なんだか気にしすぎじゃん、オレ。 あんまり見るとおかしいよな……。 でも、ちゃんと話してみたいんだよな。 「今日は疲れたからお先にっ!」 ライブ後の食事を断って街に出る。通りすがりに見つけた年季の入ってそうなバーの看板。細い階段を降りて重そうな木製の扉を押すと、カウンターにいたのは……。 「オレ、なかなかいいカンしてるな」 「何飲んでるの?」 【終 そして『唄いながら歩いていこう』1話へ】

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