アタシが住む田舎町には素敵なパティスリーがある。 　赤い隻眼にプラチナブロンドのキレイな顔したハンサムと、金眼で方耳が欠けたワイルドな顔立ちの背の高い男前、そんな二人が営むパティスリー。 　危険な香りのする二人は、アタシのような年頃の女の子達に大人気。 　アタシもお近づきになりたくて、この前お店に行った時に店名の由来を聞いてみたの。 　悪人になりきれなかった優しい魔女の名前なんですって、なんだか素敵。 　どのスイーツも美味しいけれどパンプキンパイは絶品で、あまりの美味しさに巷では「魔法のパイ」って言われてるわ。 　食べたら笑顔になってしまう魔法がかかっているってね。 　二人のどちらかが恋人になってくれたら最高だけれど、スイーツを見る時と同じ目で見つめ合う二人を見ていたら、アタシが入り込む隙間なんて無いんだって分かったわ。 　今夜はハロウィン。 　パティスリーの二人も仮装をしてお客様をお出迎えしているらしい。 　どんなお化けに変身しているのかしら、楽しみだわ。 終