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☆23

『ありがとう・・・陽向。』 『うん・・・。』 ーー草壁さん・・・。 振り向こうとした俺を、直紀が 首を横に振って 止める。 『行こう。』 『・・・うん・・・。』 ーーーありがとう、草壁さん・・・。 前を向いて、 しっかり手を繋いで、ゆっくり その場を後にした。 *** *** 残された草壁。 背後から近づく人影。 『あ~あ。行っちゃいましたね。』 『・・・賭けは僕の負けだね。』 物陰から出てきたのは、シン。 陽向を惑わすような発言をした草壁に お酒を運んだときに、余計な事を しないように、釘をさしておいて、 それから「賭けをしないか」と持ちかけた。 ヒナを追い詰めてみて、 どっちを選ぶか。  『まぁ、負け戦だったよね。』 と、草壁は寂しそうに笑う。 『本気で手にいれたかったんだけどね。』 その言葉にシンは慌てて頭を下げる。 『ごめんなさい。・・・でも、ヒナは・・・』 『分かってるよ。僕のものには ならない って、最初から 分かってた。』 『草壁さん・・・』 『それでも2割くらいは、いけるかなー、 なんて思ってたりもしたんだけど。』 草壁は、大きく息を吐くと、 シンの方を見て、フッと笑った。 『さて、君にはフラれて傷心の僕を 慰めてもらおうかな。』 『はい・・・?』 『好きにしていいって言ったよね?』 『え?いや、あれは言葉のあやで・・・!』 『言ったよね?』 『い、言いました・・・・。』 『そう。じゃあ行こうか。』 『ど、どこに!?』 『僕の家。色々 取り揃えてるからね。 朝まで遊べるよ?』 『え!?・・いや、え? ちょっと!! ヒナが好きだったんじゃないん?? 切り替え、早くない!?』 『はは。冗談だよ。でも、朝まで つきあってよ?とことん飲むから。』 『の、飲む・・・だけ・・・なら。』 『よし、決まり。』 『・・・・(大丈夫かな・・・)。』 ヒヤヒヤしながらも、約束しちゃったしな・・ と、黙って後をついて行く。 ずっと、ヒナが直紀さんと やり直せないか、って思ってた。 ヒナは気づいてなかったけど、うちに 転がり込んできた その日から、 毎日 寝言で 直紀さんの名前を呼んでた。 まだ好きなのに、気にしない振りをして 忘れようとしてる姿が痛々しかった。 ーーーヒナ。 ・・・・・よかったね。 でも、 今度は寄生虫にならんように! 明日にでも、そう電話で言ってやらんと。 俺が無事で いられたら。

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