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第10話
下校途中のミクはおかしかった。
普段なら色々会話をするのに全くしない。
それどころか、いつも一歩後ろを歩くミクは三歩くらい後ろを歩いている。
校舎を出て送迎のリムジンが停まっているところまで来ると、ミクは駆け出して俺の前に出てドアを開けてくれた。
……それはしてくれるのか。
「ありがとう、ミク」
「そっそんな、……もったいないお言葉です」
目を伏せ可愛い表情で言われた。
確かに可愛いけど、目をあわせて言って欲しかったな。
車にミクも乗り込んで、家まで走り出した。
ミクは車の中でも黙りで、視線すら合わせてくれないようで俺はミク淋しくなり、今日は俺から話しかけた。
「ミク、新一年生はどう?」
「可愛いです。……僕がしっかりしなきゃって思いました」
「良いなぁ〜。俺もミクに可愛いって言われたい……」
「坊っちゃんはカッコイイんです!!とってもハンサムで、僕の憧れの人ですっ」
「じゃ、なんでその俺の目をみて話してくれないの?」
俺はミクの小さな手を取って、視線を強引に合わせた。
「やっと俺を見てくれた」
……見てくれたけど、大きくて可愛い瞳が揺れていた。
こんなミクを見るのは初めてで、歯止めが効かなくなり、俺は小さな彼の身体を抱き締めていた。
「あっああああの、坊っちゃんっ駄目です!!僕、無理ですぅ」
「何が無理?」
「……」
「何があったかは知らないけど、あんま無理しないように。ミクはいつものミクでいいんだ」
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