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第6話

智瑛を元気付けたい。 俺は部屋に帰ってきてパソコンを開くと、ミオちゃんを徹底的に研究した。 私服ではない。今まで手を出してこなかった、キラキラで派手なアイドル衣装だ。 可愛い女の子のド定番であるワンピースタイプはもちろん、制服のようなデザインや白く綺麗な脚を見せつけるショートパンツもあればふわふわのスカートもある。男の俺が着ても不自然じゃなさそうなデザインはないか探した。 髪型は?メイクは?ミオちゃんのトレードマークの眼鏡は? クローゼットの中を見比べて、ミオちゃん風のメイクを考える。ヘアアレンジを真似る。 開きっぱなしのパソコンで、どこかの誰かが作ったミオちゃんの最新楽曲の衣装を注文した。 智瑛を元気付ける方法。 そう、ミオちゃんのコスプレだ。 ─── 「ん〜〜〜…」 鏡の前で唸る。 待ち望んだミオちゃんのコスプレ衣装が届き、早速身につけてみたものの、イマイチしっくりこない。 服が悪いわけではない。縫製も丁寧だし生地もしっかりしている。装飾も忠実だ。想像よりもずっと良品が届いて、荷物を開封した時は智瑛を元気付ける当初の目的抜きに感心してしまったくらい。 もちろんメイクは研究に研究を重ねて完璧だし、ヘアセットだって丹念に仕上げてある。 俺はため息を一つ吐いて、鏡に手をついた。鏡の向こうのミオちゃんの格好をした俺と手が重なる。 これならコスプレにこだわらずにミオちゃんの私服を真似たいつもの女装の方が数百倍マシだ。 けどそれじゃ意味がない。 ミオちゃんの握手会に行けない智瑛に、せめてその気分だけでも味わって欲しいのだ。私服じゃただの女装した俺だ。 安くはないアイドル衣装まで用意した自分がなんだかバカみたいで、俺は視線を落とす。 と、ふと閃いた。 大きく空いたスクエアカットの襟ぐりが、若干カパカパしている。本来ならそこを、女の子の豊満な胸が埋めるはずなのだ。 俺は男だから、その胸がない。 クローゼットの一番奥に、買って一度試したきりのものがある。 俺はアイドル衣装を脱いで、それを身につける。そしてぷにょっとした感触の秘密兵器を装着し、再びアイドル衣装を着て鏡を見た。 「完璧だ…!」 カパカパだった襟ぐりを埋めたもの。男の俺にはないはずのもの。 その名も、擬似おっぱいだ。

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