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第7話

ミオちゃんのコスプレを完璧なものにした俺は、翌日生徒会の仕事を早々に片付けて智瑛との秘密の逢瀬に向かった。美術室のドアを開けると智瑛は既にそこにいて、なにやら真剣にiPadに向かっている。 隣に腰掛けてiPadを覗き込むと、可愛らしくデフォルメされたイラストを描いていた。今はのっぺらぼうで裸のそれは、きっとこれからミオちゃんに変身するのだろう。 「智瑛、いつの間にiPadなんて買ったんだ?」 「ツイッターでいつもお世話になってるフォロワーさんがね、新モデル買うからって譲ってくれた!持つべきものは友だね!」 「そうか…」 「流石に数年使ってるからちょっと重いけど、俺のボロパソコンに比べたらもう快適過ぎて…!」 「そうか…」 なんか、元気だ。 ルンルンしている。周囲に花が舞っている。気のせいではないと思う。 俺はちょっと拍子抜けしたが、元気なのはいいことだと言い聞かせ、気を取り直すために膝の上でグッと拳を握り息を吸った。 「ち、智瑛。」 「なぁにー?」 「今日の夜、部屋に行ってもいいか?」 「え、無理無理!足の踏み場ないよ!俺今デスクに突っ伏して寝てるもん!」 寮の部屋にベッドはあるはずなのに寝るスペースがないとはどういうことだ。 喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。 「じゃ、俺の部屋に来ないか?」 「無理だよ…!見られたらヤバイよ、浅尾くんに近付いてんじゃねーよキモオタって刺されるよ…!」 「そんな過激な生徒いないだろ…」 「優太、気付いてないの?新聞部が記事に使わなかった優太の写真結構な高値で売ってるの。」 「なんだそれは!」 「あれっ?気付いてて自由にさせてるんじゃなかったんだ…」 「そんなわけないだろ!」 新聞部、問い詰めに行ってやる。 固く心に誓ったが今はその時じゃない。今は、智瑛を元気付ける為にミオちゃんのコスプレをして握手会気分を味わってもらうセッティングをしなければ。しなければいけないのだが、しかし。 部屋に行くのも来てもらうのもだめって、一体どうすれば。

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