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エピローグ

青空の広がる昼下がり。大羅は、1人で庭弄りをしていた。時々、昼食を作っている哲の姿をこっそりと見ながらだ。 たまに目があって、互いにクスクスと笑う時間がたまらなく愛しい。そう大羅が思えるようになったもの、哲のお陰だった。 あの時、大雅にさよならと言われた後、大羅はショックのせいか気絶したらしい。そして大羅が目を覚ました時には、大雅はもうそばにいなかった。その代わり、心配そうに顔を歪めている哲がそばにいた。 『てつさ、』 『っ、良かった。目を覚ましてくれて』 目を覚ましてから、何度も大雅のことについて聞いた。でも、哲は大羅に何1つ教えることはなかった。 最初の頃は、何も教えてくれない哲に心を閉ざしていた。どれだけ見舞いに来てくれても、見向きもしなかったし、口も聞かなかった。 それでも、何度も何度も来てくれる哲に次第に心を開いた。元々、恋心を抱いていたのも理由にあるのだろうが。気づけば、2人は付き合うまでになっていた。 「、いら。大羅」 「あ、哲さん」 「飯、出来たぞ。そろそろ中に戻ってこいよ」 「はい!」 パタパタと服についた土を軽く落として、いそいそと中に戻る。テーブルには、哲特製のパスタが置かれていた。大羅が育てたプチトマトが使われているパスタ。 「美味しそう!」 「だろ?ほら、早く手を洗ってきて。じゃないと冷めちゃうぞ」 哲は冗談混じりに言ったが、冷めたパスタを食べるのは嫌なので慌てて手を洗いに行く。 急いで手を洗って戻れば、哲が定位置に座って大羅を待っていた。 「お待たせ、哲さん」 「全然待ってねーよ。じゃ、食べますか」 「うん」 哲とこうして過ごす時間が幸せだと、大羅は最近になって思うようになった。 今までは、哲のことを好きで付き合ってはいたが幸せになってはいけないと心のどこかで思っていた。だって、隣に大雅がいないから。 大雅がそばにいないのに、自分だけが幸せになってはいけない。そう思っていたのに。1ヶ月くらい前に、大羅の元にある1通の手紙が届いた。 手紙の差出人は大雅だった。 手紙には余計なことは書かれておらず、ただ一言だけ書かれていた。 今、大羅は幸せですか? 「しあわせだよ、たいが」 そう、大雅に伝えたいと思うようになってからだ。幸せになる覚悟が出来たのは。 いつか、大雅に会えた時に自分は幸せだったと伝えられるように。 大羅は今日も、哲との幸せな時間を過ごすのだ。 END

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