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5話
どれぐらいの時間が経ったのかよく分からない。大雅と手錠で繋がったあの日から、大羅は1度も外に出てはいなかった。バイトも大雅に辞めさせられた。
ずっと家の中に大雅と2人。食料が尽きれば、大羅を置いて、大雅が買いに行っていた。大雅がそれを買う金をどういう風に手に入れているか、大羅は分からない。知ろうとも思わなかった。
ただ知りたいのは、哲がどうしているのか。ただそれだけ。
もしかしたら、自分のことを心配しているかもしれない。再会してから、こんなに会えない時間が続いたのは初めてだった。
心配していてくれたら嬉しい。探してくれていたら、もっと嬉しい。
でも、この現状を知られたくはなかった。
「ただいま、大羅」
「たい、が」
今まで外に出ていたらしい大雅が帰ってきた。たくさんの食料品を抱えて、大羅が変わらずそこにいることにホッとした表情を浮かべている。
「ごはん、いっぱい買ってきたよ」
「うん」
「また無くなったら、買ってくるから」
「うん」
「だから、まだそばにいてくれるよね、大羅」
「うん。そばにいるよ、たいが」
約束。幼い頃、約束をする時は2人で唇を合わせていた。その頃と同じように、大羅は大雅の唇に自分のそれを合わせた。
例え、どんな酷いことをされたとしても、大羅は大雅と離れたいとは思わないだろう。家族だから。自分の半身だから。
「ずっとたいがのそばにいる」
それは、大羅の本心だった。ずっと大雅のそばにいたい。どんなことがあっても、そばにいたいのだ。
大雅にとってそれは嬉しいことのはずなのに。昨日までは、この言葉を言ってあげれば泣き止んでくれたのに。今日はどうしてか、ずっとホロホロと涙を流していた。
大雅の瞳からこぼれる涙を拭ってあげたい。けど、手錠をかけられているし、逃げないようにその手錠をベッドの柵にくくりつけられているため出来ない。
「たいが、」
「俺も、大羅のそばにいたい。ずっと一緒にいたい。でも、そうしたら大羅がこわれちゃう」
「どういう、」
「ずっと一緒にいる。俺達は2人で1人だから、そうなんだって思ってた。でも違う。違うんだよ、大羅。こんなことでしか大羅を繋げない俺は、いっしょにいちゃだめなんだよ」
大雅はそう言うと、ズボンのポケットから手錠の鍵を取り出しで、大羅から手錠を外した。
何でと見上げてくる大羅に、大雅は泣きながら笑う。
「大羅が好き。大好き。でも、俺は、大羅のことを大好きになっちゃいけなかったんだ」
だから、さよならだ。たいら。
大雅のこの言葉を最後に、大羅の意識は闇深くに沈んでいった。
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