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4話
それから、大羅の生活は少しずつ変わっていった。大雅のために働くことが苦に感じなくなったのだ。
大変なのは変わらない。しかし、哲とよく会うようになったのだ。バイトの合間に哲は時間がとれれば毎日のように会いに来てくれた。たまに、バイト先に客として来ることもあった。
もう会えないと思っていた大好きな人がそばにいて、大羅は本当に幸せだった。
もしかしたら、この幸せがずっと続くかもしれない。今まで苦労したが、それはこの幸せを味わうために必要だったのかもしれない。そう思えるようになったのに、幸せは長く続かなかった。
「“あいつ”と会ってるの、大羅」
「たい、が、」
バイトが終わって哲と会って少し話したあと、慌てて家に帰ると玄関で珍しく大雅が待っていた。そして今の言葉を言われた。
あいつ、鉄の存在が大雅にバレていたのだ。バレないように、必死で隠していたのに。大雅は気づいていたらしい。
「ね、大羅。何であいつと会ってるの?」
「大雅、ねぇ、落ち着いて、」
「大羅は、大羅は俺のだ!!ずっとずっと、俺のために存在する、俺だけのだ!」
大雅はそう叫ぶと、大羅の手を引いて家の中に入った。そして、ドダドダと足音をたてて部屋の中を進む。苦情が来ると思ったが、どこかおかしい大雅を前にして大羅は何も言えなかった。
そして気づけば、大雅と大羅の手首は手錠で繋がれていた。
「たいが、なんで、」
「たいらは、俺のだ。ずっと、ずっと、おれの。おれのそばに、ねぇ、大羅」
ボロボロと涙を流しながら、大雅が大羅にすがり付く。この時、無理矢理にでも引き剥がしていれば良かったのかもしれない。しかし、大羅にはそれが出来なかった。
自分の前で初めて子供のように涙を流す大雅を、大羅は無視できなかったのだ。
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