4 / 7

3話

『お前が大羅様か?』 いつもみたいに1人でいた僕に、屋敷で初めて見る男が声をかけてきた。随分と若く、日に焼けている肌は男らしくてかっこいい。真っ白な自分とは大違いだった。 僕のことを様をつけて呼んだのだから、お手伝いさんだとは思うんだけど。今朝、新しいお手伝いさんが入るとは誰も言ってなかったように思える。 『………だれ?』 『俺か?今日から庭の手入れをする、篠宮哲(しのみやてつ)だ。よろしくな、大羅様』 この屋敷で、この人が初めて僕に笑顔を見せてくれた。それがすごく嬉しくて、でも恥ずかしくて。慌てて哲さんから逃げた。 「て、つさ、ん?」 父親の会社が倒産して、屋敷で働いていた人達すべて辞めさせた。その時に、もう一生哲とは会えないと大羅は諦めていた。 でも、こうして会えた。 「久しぶりだな、大羅様」 「…………様はもう、いらないですよ」 「そうか?だったら大羅、元気にやってるか?」 哲のその問いかけに、大羅は答えることが出来なかった。嘘でも元気にしてると言えばよかったのに、哲の前ではどうしても嘘がつけなかった。 しかも、哲と再会する前まではこんな生活はもう嫌だと思っていたのだ。元気なわけがない。たまに、死んで逃げ出したいと思うぐらい辛い時もあるのに。 「………………」 「………大羅。ごめんな、変なこと聞いて」 「、え?」 「よく見れば顔色も悪いし、フラフラしてるのに。元気かって変な質問して」 申し訳なさそうに顔を歪める哲を見て、大羅はブンブンと首を横に振った。別に哲は悪くないのだ。 でも、哲が自分を心配してくれるような感じがして。 「……………ありがとう、気にかけてくれて」 久々に大羅は嬉しくて笑った。

ともだちにシェアしよう!