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3話
『お前が大羅様か?』
いつもみたいに1人でいた僕に、屋敷で初めて見る男が声をかけてきた。随分と若く、日に焼けている肌は男らしくてかっこいい。真っ白な自分とは大違いだった。
僕のことを様をつけて呼んだのだから、お手伝いさんだとは思うんだけど。今朝、新しいお手伝いさんが入るとは誰も言ってなかったように思える。
『………だれ?』
『俺か?今日から庭の手入れをする、篠宮哲 だ。よろしくな、大羅様』
この屋敷で、この人が初めて僕に笑顔を見せてくれた。それがすごく嬉しくて、でも恥ずかしくて。慌てて哲さんから逃げた。
「て、つさ、ん?」
父親の会社が倒産して、屋敷で働いていた人達すべて辞めさせた。その時に、もう一生哲とは会えないと大羅は諦めていた。
でも、こうして会えた。
「久しぶりだな、大羅様」
「…………様はもう、いらないですよ」
「そうか?だったら大羅、元気にやってるか?」
哲のその問いかけに、大羅は答えることが出来なかった。嘘でも元気にしてると言えばよかったのに、哲の前ではどうしても嘘がつけなかった。
しかも、哲と再会する前まではこんな生活はもう嫌だと思っていたのだ。元気なわけがない。たまに、死んで逃げ出したいと思うぐらい辛い時もあるのに。
「………………」
「………大羅。ごめんな、変なこと聞いて」
「、え?」
「よく見れば顔色も悪いし、フラフラしてるのに。元気かって変な質問して」
申し訳なさそうに顔を歪める哲を見て、大羅はブンブンと首を横に振った。別に哲は悪くないのだ。
でも、哲が自分を心配してくれるような感じがして。
「……………ありがとう、気にかけてくれて」
久々に大羅は嬉しくて笑った。
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