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2話

バイトで疲れているのに、家に入ることは叶わなかった。 いつもなら、この後もすぐバイトだが今日はたまたま休みだった。だからこそ、いつもよりも睡眠を取って昼からのバイトを頑張ろうと思っていたのに。 「つかれ、た。ねむ、い」 最近、まともに眠れていないような気がする。いっぱい頑張っても、頑張っても、頑張りが全然足りない気がする。 寝る間を惜しんで、大雅のために働いて。 そもそも、何で自分がこんな生活をしないといけないのかと大羅は思っていた。 大羅と大雅の父親は、とある会社の社長だった。仕事をバリバリとやって、家族を大きな屋敷に住まわせた。屋敷にはたくさんのお手伝いさんもいて、不自由なく生活を送れていた。 大羅は、大雅のように両親や皆からの愛情は受けられなかった。それでも、大好きな人の側にいられたから幸せだったのに。 父親の会社が倒産してから、生活はガラリと変わった。 会社が倒産して、父親は莫大な借金を抱えることになった。大雅を不自由させないように、両親は必死に働いた。大雅はそれを当たり前のようにして生きていたし、大羅は、そのおこぼれを貰いながら必死に生きてきた。 しかし、その両親も死んだ。借金と、愛しの大雅を残して。 それからだ。大羅が、大雅のために必死で働いているのは。 大雅はそれが当たり前だと思っている。自分を生活させるために、他人が働くのは当たり前だと。今までその対象が両親だった。しかし、両親がいなくなった今その対象が大羅なのだ。 大雅の願いを叶えるのは当然のこと。 それが思考の根っこにある大羅は、必死に大雅の願いを叶えるために頑張っているのに。 「もう、やだ、」 「たいらさま……?」 懐かしい声だった。 大羅は溢れる涙を必死で拭って顔をあげた。 するとそこには、思い出に残っている時よりずいぶんと更けた愛しの人が立っていた。

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