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第1話

その黒猫(トール)を拾ったのはカボチャの飾りが街からすっかり消え失せた頃だった。 アパートに帰る道すがら何度か顔を合わせていたけれどその日初めて声をかけてみた。 よっぽど寂しかったのかなオレ。 「おい、よく会うな。あれ、こっち見た、あはは……お前オレの言ってることわかったの?」 目の前を行く黒猫はぴとりと脚を止めてオレをじっと見る。 「可愛いな、お前」 オレがそう言うと ニャーとひと声鳴いて何とその場にお座りして見せた。 「何だよ、まさか自分のこと犬だと思ってんのお前は?」 しゃがんでそっと近寄っても逃げる素振りも見せずに首を傾げて座ってオレを見ている。 「お手」 と言ったのは勿論冗談だった。 なのに ぴとっとオレの掌に白い手袋をはめたような前脚を乗せた。 その仕草を見た時オレはずっと心の奥に無いものとして隠していた欲望が溢れ出すのをどうしようもなく止められなかった。 * Ωの発情の周期は個人データ化されて政府に徹底的に管理されていた。 日頃はピルを常用し自らコントロールすることが義務化され勝手に欲情する事は許されていなかった。 「……っん……あ、あン……うっ……んっん….…あっ、はぁはぁ……あっア… ダメ…ダメ…」 ダメなのにこんなこと…こんなこと…ちゃんとコントロールしないとダメなのに……でも…… 後孔に自ら咥え込んだ淫猥な動きをするローターのリモコンのスイッチをどうしてもオフに出来ない。 「あぁぁぁ…もっと……」 「ニャー」 「ダメ、トール。見ないで……見ちゃ……うっ……き、気持ち……いい……」 金色の瞳に見つめられて まだ触れてさえいない欲望が上を向きその先から蜜を垂らす。 「ニャー」 まるで美味そうだと言うように細いピンクの舌を出す。 「ダメ……ホントに……ダメ……ん、っ……」 ゆっくり近付いて来るトールから目が離せない。 「イっちゃう……イっちゃう……はぁはぁ……んん、出ちゃ、うぅ……出ちゃうよ……ッん、あっあっ……うっ、、、、、」 心地の良い脱力感の中でぴちゃぴちゃと音を立てて白濁を舐めとられながらオレはあの夜の事を思い出していた。

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