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第8話
「トキ。着物、よく似合ってるね」
「…………兄さんの目に狂いはないから、」
「でも、その着物は朱鷺が一目惚れしたって聞いたよ。それは、トキの目にも狂いはないってことだね」
いつも見ている笑顔なのに、いつも以上にドキドキする。これからルークがプロポーズをすると分かっているからか。それとも、ルークが着物を着ていて、雰囲気に色気が増しているからか。
何でかは朱鷺には分からない。でも、自分からルークのことが大好きだという気持ちがあふれでているのは分かった。
好きだ。この人が大好きだ。
「ルーク」
「ん?」
「………煙管、使ってみて。俺、その着物を着たルークが煙管を吸っているところ見てみたい」
朱鷺の願いにルークは「OK」と返事をすると、慣れた手つきで煙管の準備を始めた。朱鷺は1度も見たことはないが、何度か使ったことはあるらしい。
あっという間に準備を終えて吸い始めた。
朱鷺のリクエストで、障子を背もたれにしながらルークは吸った。その姿を、少し離れた場所から朱鷺は眺めた。
美しい。ルークが煙管を吸っている姿は、本当に美しかった。
「うん。やっぱり、その着物を選んでよかった」
あの時ルークのために選んだ着物。シンプルな紺色の着物は、ルークの金髪をまた美しく引き立てていて。
「キレイだよ、ルーク。まるで月みたいだ」
「月?」
「ん。ルークの髪が月で、着物が夜空。そしてね、煙管の煙が、月にかかる薄い雲みたいで」
キレイと言う言葉を飲み込んで、朱鷺はルークに近づいた。そして、障子を背もたれにして座るルークに寄り掛かると、自分からそっと唇を合わせた。
「―――――愛してる、ルーク。だから、ずっとそばにいて」
「おや。僕がプロポーズしようと思ったのに。先を越されてしまったね」
「俺だってやるときはやるんだよ。それで、返事は?」
「もちろん。僕はずっと君のそばにいるよ、トキ」
ルークが煙管を置いたのを合図に、2人の甘い夜が始まりを告げた。
END
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