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chapter.2-1 Roar of a Killer whale
「今んとこポータルに侵入された形跡は無いよ」
机上には次々投げ出される菓子の包み紙。
格好はチャラチャラ可愛げもなく、突っ掛けサンダルの脚を投げ出す。
隣の少年を目に、牧は頭痛を覚えて目頭を押さえる。
「取り敢えず削除済みファイルは起こしたし、システムのイベントログとかサーバー上は全部見た。何もない、平気」
「削除済みファイルって何?侵入の痕跡なん?」
「そうだよ。大概ログファイルの履歴を消そうとする時、コピーで書き換えて元ファイルは削除するのさ」
漸く振り向いた目には、一端の無邪気さくらいは残っていた。
と、思いたい。
何処で育て方を間違えたのだろう。御年16になる渉くんは、周囲の大人の駄目な部分を総括したような有様になってしまった。
「だからサーバー上にある削除済みファイルを復元出来たら、そっから脚がつく例もあるって話ね。まあ既に個人PCに入って、正規のアカウントでログインされてたら知らんけど」
「うーん、分かった。分かったけど渉くん、君机の上片付けなさいね」
「はあん?何だお前小姑かよ、いんらよろーせ俺らひひばん仕事して…」
「片付けなさいね」
無気力に釘を刺すも、マドレーヌを貪る少年には受け流される。
(俺や千葉くんの所為じゃないんだよなー、多分…間宮の所為なんだよな)
あとは確実にあの捻じ曲がった雇用主の責任だ。
結論付けた牧は早々と席を立ち、自分の作業へと帰る。
例の面談が一段落した翌日、受け持ちだけでもタスクは山積みだった。
(あ…電話)
そして検閲待ちの束へ手を伸ばしかけ、着信音に留まった。
携帯を探り当てれば、掛けてきたのは頼み事をしていた千葉だ。
「…もしもし?ごめんなー千葉くん、帰って早々面倒なこと頼んで」
『いいよ別に、仕事そっちに投げたの俺だし』
昨晩、牧は早速ロスから戻った彼に電話をしていた。
その持ち前の交渉力を見込み、目星をつけたマッシュヘアーの彼へ接触を頼んだのだ。
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