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第1話

本当に死にたいわけじゃなかった。 失敗を擦り付けてくる同僚に、人の揚げ足をとるのが得意な部下、不能な上に結果しかみない上司。自分の仕事ばかり増えて、使ったことない有給。 そもそも入社説明会で受けた週末の休みなんてとれたことがない。 アパートと会社の往復で日々が終わる。高校を卒業してから今年で8年目。 最近はもう何を食べても味がしなくなった。 久しぶりに早く帰れたある日、立ち寄ったスーパーで自分と同じ年くらいの男性が小学生の女の子と買い物に来ているのをみかけた。ただお菓子を選んでいるだけなのに、酷く幸せそうにみえた。自分には到底手に入らない日常だろう。 特に食べたいわけでもない半額になった惣菜を買って店を出る。 俺、何のために生きているんだっけ… 大人になったら仕事をしてお金を稼ぎ、趣味を楽しんで、結婚をして子供が生まれて、自然と幸せな家庭を築けると思っていた。だが20代後半になってもまだその気配はない。今のこの生活では到底そんな未来がくるとは思えない。 急になにもかも空しくなった。 周りに迷惑かけないよう、上司の機嫌を損ねないよう必死で仕事をした。 だがどうだ。俺の生活は好きなことをする時間も気力もない。もう自分が何を好きなのかさえ忘れてしまった。 もうやめてしまおうか、何もかも。

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