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第38話
ミト視点ー
俺は身をゆだねることにした。
ルートの指先はいつも冷たいけど、身体はあったかいんだな。水分で体温が低くなっていたのかルートの熱がじんわりと移っていくのがわかる。こうやって人に包まれる感覚、なんだか久しぶりだ。安心するのか俺の中で張りつめていたものが少し溶けていく感覚がある。ルートいい匂いするし。
満足したのかもぞもぞと動いて、少し赤くなった顔が見えた。背中に回されていた腕は下に落ちて、今度は手を握られる。
「落ち着いた?」
「うん」
すっかり幼くなった仕草と言動に思わず少し笑った。
「言ってなかったけど、僕は王室の人間なんだ。本当に帰りたいならその手段を探す手伝いもできる。存在するかはわからないけど」
「あ、ありがとう」
なんか凄い事をさらっと言われた気がする。でもこれで色々な謎は解けた。ルートが上質な紙を持っていたのも王宮に頻繁に出入りしているのも。俺がシオンから離れてここに連れて来られたのも、あの親戚達のお披露目会も。今まで良くしてくれたのも、俺がオーズだから。
「でも、僕は君に傍にいてほしいよ」
答えられずにいると、お互いの手を絡ませてきゅっと握られる。
「ふふ。それか僕が付いていこうかな。君がいたところに」
「あ、それがいい。俺もルートがいてくれたら安心」
冗談ぽく笑い合うと、片方の手を頬に添えられる。
「約束して」
「勝手にどこか行かないで」
真顔で見つめられると居心地が悪い。
「行く時は、僕を連れて行って」
「うん、わかった」
あ、と思った時にはまた冷たいものが唇に触れる。
「僕とこういう事するの、嫌?」
少し吸われてから、のぞき込まれる。
そういえば嫌じゃない。ルートは男だけど綺麗だから?
何にも考えずゆるゆると首を横に振ると今度は深く口付けされる。
「ン!ふ、んぅ、ぁ、う」
驚いて逃げようとした手を摑まえられて握りこまれる。
「はぁ、あ、まって」
舌が行き交い体が動くたび水面が揺れぴちゃりと音をたてる。
「嫌じゃ、ないから、待って」
ようやく解放されて呼吸を整える。少し抗議も込めてルートを見るとその表情からは何も読み取れなかった。
「ミト、これから何があっても今日の事忘れないで」
「え?」
「約束だよ」
祈るように口付けをされる。
約束、と言いながらどうしてそんな叶わないような諦めてたような声で言うんだ。
顔を見ようと薄目を開けると、ルートの後ろがチカチカ光る。絡めた手を握り返して、入り込んできた舌に応える。白い壁にステンドグラスがはめ込まれて、そこからの光が彼の長髪に色をつける。そうだ、最初に入った時から思ってたんだけどやっぱりここって。
「約束」
教会みたい
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