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噂の1年生

「ねぇ!あれ!?」 「うっわ、何あれ!?」 「オーラ違いすぎ~」 「てか、ほんとに男?」 キャーキャーと騒ぐ教室。 入学して3日、ずっとこの調子。 「杏文~お前目立ちすぎなんだよ」 「雪哉、何言ってんの?君もだよ?」 「ちっげーよ!杏文がその女顔で男子の制服着てんのがわりーんだよ!」 こいつは町田雪哉。中学1年の時からクラスが一緒で俺が女装趣味の男だと知っててもつるんでくれる数少ない……というか、唯一の友達。 「え?だって俺男だよ?」 「だァー!!!俺か!?俺の言い方が悪いのか!?」 クールに見えるが意外といじりがいのある奴なのだ。 「そうだね~」 「……杏文……。おまっ、……もういいや。」 机にうっぷす長身のイケメンて得だよな。 悪いが間違ったことは言ってない。目立ってるのはこいつの影響も0ではない。 この花見台高校に入学して 「なんで男の制服着てるんだ?」と教師に質問されること、12回。すなわち 「女の子はセーラーを着なさい」と言われること12回 「え?男!?」と言われること…………数えてない。 「あ、杏文、土曜出かけねぇ?」 「ねぇ!やっぱりあの二人!」 「えぇーまじで??カッコイイのに残念」 「キモすぎ~」 「このクラス終わってるぅ」 もちろん、俺は女装が趣味だし、顔も完璧に女だから何言われても不快だなんて思わないけど、やっぱり高校でも仲良くしてくれてる雪哉まで、悪く言われるのは少し嫌だ。 入学して3日でもう既に俺たちはそういう風に見られていた。噂の1年生。聞こえはいいが、中身は最悪だ。 「ん?杏文~??土曜!暇じゃねーの?」 聞こえてるくせに、関係ないみたいな顔して話しかけてくれる雪哉に申し訳ないと思いながらも、どうせ何言ったって俺を無視するようなやつじゃないから余計腹立つ。 ドスッ っと肘を腹に入れてここぞとばかりにため息をついてやる。 「うっ、いっでぇ、何にすんだよ!」 「はぁ、全く」 「え!?なんでお前が呆れてんの?」 「いーよ?どこ行くの?」 俺は5歳の時、女子の格好をすれば認めてもらえる。コンプレックスは消えると学んだ。 実際に小学校は私服だったし、決まりもなくて、いじめられるどころか、女子達と仲良くしたり、保護者からも女の子っぽくて可愛いわぁとか、男子からだって俺を見たら赤面して優しくされた。 だからタンスのほぼが女物や姉のお下がりになっても何も思わなかったし、なんなら、爪とか髪とか、誰よりも女子力を磨いた。 だから中学校になって、コンプレックスが消えて出来た癖がまたコンプレックスになるだなんて思わなかった。 それに俺だけ言われてるならまだ良かったのに、雪哉まで巻き込んでるのがまた一段と堪える。

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