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可愛いワンコは狼だった!? 第1話
最近、夜になると遠吠えが聞こえるようになった。
よくテレビで見る狼のアレ。もしかすると、はぐれた仲間を探しているのかもしれない。
ある日、夜遅くまで仕事があって暗い道を歩いて家に向かっていた。
「あ、まただ…」
また遠吠えが聞こえる。少し切なくなる狼の声に俺の心は癒される。
「…おニイさん」
「え…?」
突然声をかけられて後ろを振り返ると、背の高い男性がいた。琥珀色の瞳が俺を見ている。
「ハラ減って、何か、食べ物欲しい……。」
「そ、そうなんだ……。お金は無いの?」
「カネ……カネ、ない。」
フラフラした動きで近付いてくる。
逃げようと思ったけど、何だか様子がおかしい。
「ハラ、ハラへって、死ぬ…。」
「え、えぇ!?」
その人が倒れそうになって、慌てて体を支えた。
「ご飯、ご飯だよね!と、とにかく家に……」
「ぅ、うぅ……あぅ……」
「え、何……?」
「あぅぅ……」
必死に言葉を伝えようとしてくるけど、俺には聞き取れない。とにかく家に運んで、ご飯を作った。
生憎今家には白米しかない。それをリゾットにして出してあげると、嬉しそうに食べていた。
「名前は?」
「ガウゥッ!」
「え?」
「ぁ、えぁ……ろ、ロイ」
「ロイか。俺はウィル。よろしくね」
「よ、よろしく……」
なんだか、可愛い子だな。
さっきは暗がりで見えなかったけれど、グレーがかった短髪の髪に、少しがっしりとした体格。
「そういえば、君のご両親は?まだ10代に見えるよ?」
「は、はぐれタ。迷子、なってる。」
「迷子か…。あ、でもこの時間は1人で彷徨かないほうがいいよ。最近狼がいるからね。」
「……オオカミ、嫌い……?」
「ううん。嫌いじゃないよ。ただもし仮に気に障ることをしてしまったら、相手は噛み付いてくるかもしれないからね。それで殺されたりしたら可哀想だ。」
そう言うと、ロイは目を輝かせた。
そして、俺の手に自らの手を重ねてくる。
「あのな、あのな!」
「うん、なあに?」
「じゃあ、オオカミ、好きカっ?」
「え……?うん。好きだよ。」
そう言うと、ロイはより一層笑みを深めた。
「俺な、オオカミ!」
「······うん?」
「あ、待って、叫ぶのダメ!でも見て!」
「うん。叫ばない。見ていたらいいの?」
上手く言葉が話せていない。
彼はちゃんと教育をされているのだろうか。
そう思っていると、突然ロイの体から煙が出た。そしてがっしりとした体格から、だんだんと小さくなる。
「ガウッ!」
「······狼だ。」
煙が無くなりそこにいたのはロイではなくて、1匹の狼だった。
「······ロイなの?」
首を縦に振った狼。そっと手を伸ばすと、ぺろっと掌を舐めてくる。
「最近この辺りで遠吠えしてるのはロイ?ご両親を探してるの?」
「ガウッ!」
最近の不思議も納得がいって、ロイの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「家族が見つかるまでここに居ていいよ。」
そう言うと、また煙が立って、今度は人間の姿のロイが現れた。
「俺な、これも、できるゾ!」
「わあ······耳と、尻尾だけ狼なんだね?」
「そうダ!凄いカっ?」
「凄いね」
ニシニシと笑うロイが可愛くて、頬を撫でると、撫でられることが好きなのか自分から俺の手にすり寄ってくる。
「ロイ、今日はもう遅いよ。お風呂に入って寝なさい。」
「ハーイ!……ん?おふろ?何だそれ」
「あー……水浴びみたいなことだよ。」
「水浴びか!好きだ!」
尻尾がピコピコ動いて可愛い。
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