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1-F
「ただいまー」
「お、おじゃましまーす」
誰もいない家に帰宅の挨拶をする佐久間と低姿勢な俺。
只今、午後4時36分。
立派なマンションすぎて、足が竦むよぉぉぉ。
「俺の部屋は奥の右側。こっちがトイレ、隣が洗面所になるから」
靴を脱ぎながら、簡単に説明をしてくれた佐久間。
「飲み物何がいい?」
「な、何でもいいよ。お構いなく…」
「さっきコーヒー飲んだからなぁ…、紅茶にするわ。あと何か見繕って持ってくから、先に部屋行ってて」
「りょ、了解です」
俺の返事を聞いて、佐久間はリビングダイニングがあると思われる方へ向かって行った。
とりあえず、手洗いうがいと思い、さっき佐久間が教えてくれた、洗面所へ行くと…。
「鏡、デカっ!」
目の前に巨大な鏡が出現!
洗面所って言ってたけど、横にはガラス越しのバスルーム…。
立派なマンションとは思っていたが、デザイナーズマンションだったのね。
俺、ファミリータイプしか知らないよ。
何とか手洗いうがいを終え、佐久間の部屋へ。
「し、失礼しまーす」
部屋の主がいないとはいえ、一応ね。
「や、やっぱり、オサレだ…」
佐久間の部屋は俺が想像してた通り、物が少なく、ブラウンを基調としたシックな感じ……、ってか広い!
勉強用の机が、いわゆる"学習机"ではない…。
し、しかも、観葉植物とやらも置いてある…。
え、この棚なに?このスペースにもっと物置けるんじゃね?
…コ、コレが、遊びというやつか!?あえて空間を作るってやつか!?
ん?
……これ、電子ピアノ?
楽譜も置いてるし…、佐久間、ピアノ弾くんだ。
見た目は不良っぽいけど、ピアノを弾く佐久間……。
うん、しっくりくる。
端々に見えた佐久間の育ちの良さが、佐久間とピアノをイコールにさせた。
最近、"俺の知らない佐久間"を見ると不安でしかたがなかった。
ここは、"俺の知らない佐久間"がいっぱい詰まった部屋。
だけど、ここは、安心する。
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