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15-S

「……」 「我ながら、……どうしようもねーな」 眠ったままの藤と、余韻から我に返った俺。 只今、午前2時44分。 早く寝ないと、朝が来る。 ぐっすりと眠る藤を見ながら、自慰をしてしまった。 ホントに、何やってんだ俺。 ただ、最初にあった罪悪感は、全くなかった。 「…さてと、先ずは藤から」 結局、藤の着ているスウェットは、上下とも着替えさせないといけない。 バスルームに行き、お湯で濡れタオルを作る。 部屋に戻り、藤の着ているスウェットを脱がして身体を拭く。 寝る前に洗濯機を回しておいて良かった。 乾いてあった藤の下着を履かせ、新しいスウェットを着せる。 「よっと」 キレイになった藤を、俺のベットに戻す。 よっぽど疲れたのか、着替えやベットに移動させても起きなかった。 「あー、シーツもかー」 俺が寝ていた来客用の布団にも俺の飛沫が飛んでいた。 汚れたシーツをはがし、藤の着ていたものとまとめて、バスルームに持っていく。 ついでに、ひと汗かいたのでシャワーも浴びた。 「ふーっ」 シャワーを浴びてスッキリした俺は、藤が眠るベットに腰かけた。 「……藤」 藤の顔にかかる髪を、右手で払う。 何事もなかったように、スヤスヤ眠る藤。 藤を見てあれだけ渇望していたのに、今の俺は穏やかだ。 「……寝るか」 藤を起こさないように、ゆっくりと布団に潜り込む。 もちろん、藤が眠る布団に。 「……」 片ひじをついて、藤を見る。 そして、改めて思った。 「可愛いな」 自然と笑みがこぼれる。 藤を布団に縫い付けたとき、俺は揺れていた。 藤の焦点が俺にあったあのとき。 俺を映す藤の瞳には、ゆらゆらと揺れる自分が、確かに写っていた。 期待と不安の狭間で揺れる自分が。 右手を藤の柔らかな髪に滑らす。 正直、怖かった。 俺に堕ちてくる藤が。 だから、藤からのキスを夢にしようとした。 あの日撫でたように、藤の髪を何度も撫でる。 でも、出来なかった。 『……さ、く、ま』 あんな切ない声で呼ばれたら。 藤の口元に目をやる。 夢中でキスをくれた藤。 決して激しいわけではない。 だが、おずおずといったわけでもない。 確かに、しっかりと、甘いキスをくれた藤。 "……ちゅ" お返しの甘いキスを落とし、髪を撫でていた右手を下ろす。 「……おやすみ」 そして、そのままを藤を抱きしめるようにして、短い夜の眠りについた。

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