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17-S
「んんー…」
丸くなって寝ている藤と浅い眠りから起きた俺。
只今、午前7時35分。
朝、目覚めたときに、好きな人の顔があるとか…、少女漫画か!
藤を起こさないように、ゆっくりと布団から出る。
ホントは、藤が眠る布団から出たくない。
「さぶっ」
ひんやりした空気に、一気に目が覚める。
反面、気持ちは思った以上にあったかく和らいでいる。
再度、気持ち良さそう寝ている藤を見る。
緩くなる頬。
……。
あ、俺、今、締まりのない顔してんだろうな。
そう、藤がよくする、あのニヤニヤ顔。
椅子にかけてあったフリースを羽織って部屋を出る。
リビングのエアコンをつけ、キッチンに入る。
「朝飯はパンでいいか…」
トースターにパンをセットして、冷蔵庫を開ける。
卵とベーコンを取り出し、熱したフライパンへ。
いつもなら丸かじりする林檎も、今日はちゃんと切って皿に盛り付ける。
まだ、藤は起きてこない。
朝食の準備も出来たし、そろそろ起こした方がよさそうだ。
『藤、朝になったぞ』
とか言って起こすか。
そしたら、眠そうな顔で
『もう少し眠らせて…』
とか言って二度寝しそうだなぁ。
で、起きない藤に
"ちゅ"
キスして……。
……。
昨日の今日だぞ、オイ。
穏やかだった気持ちが、また動きだす。
藤は堕ちてきた。
俺のところに。
なのに、一層強くなる。
もっと。
もっと。
もっと。
行き過ぎた独占欲は暴力だ。
必ず相手を壊す。
が、止めることが難しい。
しっかり手綱を握っておかなければ。
壊さないために。
藤を。
俺の気持ちを。
ガチャリ。
リビングのドアを開ける音。
あぁ、起きてきたか。
どうせなら、俺の布団で眠る藤を起こしたかったなぁ。
そして、キスで起きたオマエの
『おはよう』
心地良い"いつもの台詞"を聞きたかったなぁ。
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