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第6話
遡ること2週間前……。
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薄紅色の季節から新緑の季節に。
ぽかぽか陽気のなか、俺たちは屋上の片隅で、ふたり仲良くお弁当を食べていた。
「雅実、新しいクラスどう?慣れた?」
2年のクラス替えから早1ヶ月。
1年のときは同じクラスだったが、2年で別のクラスになった俺たち。
コミュ力が高く社交性のある俺とは対照的に、雅実は人見知り。
だから、大体いつも俺が仲介役となって友達を作っていく。
「んー、ぼちぼち?」
「"ぼちぼち?"って…」
ひと学年に約300人いるから、高校3年間、関わりを持たないままの同級生も多い。
だから、クラス替えで今まで知らなかった同級生と雅実が仲良くなれるか心配だった。
「雅実、人見知りだし、ホント大丈夫かよ」
「何人か1年で同じクラスだった子もいるし、大丈夫だよ」
俺の心配そうな顔に、頭を掻いて苦笑いの雅実。
「新しいクラスで仲良くなった子いんの?」
「仲良く?」
何気なく聞いてみた俺の質問に、すこし考え込んでいた雅実が、いきなり慌てだした。
「う、うん!お、俺も、そ、そんな子どもじゃないし。あ、あ、新しくできた友達はい、いる!」
「そ、そっか」
何故か顔を真っ赤にして必死になって言う雅実に、思わず体を引いてしまう。
「で、何て名前なの?」
「え?」
「その新しくできた友達」
いつもと違う片割れの様子に、雅実の言う"新しい友達"が気になってきいてみた。
もしかして、いじめられてて、不審がられないように"友達"と言っているのかもしれない!
雅実は優しいから、"イジり"と称して質の悪いいじめを受ける可能性が無きにしも非ずだ!
「え、えーっと……て、寺島」
「てらじま……、あ、もしかして"寺島晶"?」
「え?雅人、寺島のこと知ってんの?」
「知ってるもなにも、そいつ剣道が強くて有名じゃん!」
「そ、そうなの?」
「1年のときから国体とかインターハイで活躍してっから、全校集会でも表彰されてたし」
「そ、そうなんだ……」
どこの学校でもあるあるだと思うが、校長の話が長い全校集会。
ほとんどの生徒が校長の話なんて聴いてない。
雅実ももれなくその内の一人で、校長の話はもとより、全校集会の内容自体も右から左に聞き流していたのだろう。
それに、人見知りが高じて他人への興味が薄い。
雅実が、同じクラスになって初めて寺島を知ったってのも別におかしくない。
「なら、大丈夫か」
「何が?」
「雅実が、いじめられてないかってことだよ」
「えー、こんな俺がいじめられる訳ないだろ」
「いやいや、オマエ、何でもニコニコして何でもハイハイ言うじゃん。たまに、いい様に使われてっゾ」
「えー、それをお前が言う?」
「俺はいいの!双子の弟だから!」
「なんだそれ」
俺の理不尽な言いぐさにも、ハハッと楽しそうに笑う雅実。
「でもまぁー、寺島ってイイ奴そうじゃん。話しことないから、見た目で判断だけど。いつも友達に囲まれてるし、先生達ともふざけてるの見たことあるし。そんな奴と仲良くなれたんなら、大丈夫かなーと思って」
「心配してくれてたんだ。……雅人、ありがとう」
ホント、雅実は我が兄ながら、出来た人間です。
何度言うけど、こんな兄ちゃんがいる俺は幸せものダー!!
そんなことを思いつつ、パクパクと雅実お手製のお弁当を食べていると、
「まさみーーー!」
雲一つない青空に、雅実を呼ぶ声が響いた。
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