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第7話

声のした方を見ると、手を振ってこっちにやってくる生徒がひとり。 逆光で眩しくて、目を細めて見ると、 「て、寺島!?」 横で驚いたような雅実の声。 「4限目終わるなり、直ぐにどっか行ったから、マジ探したし。昼飯、一緒に食おうって言ったじゃん」 噂をすればナントヤラ。 爽やか笑顔で俺たちの前に現れた寺島。 「い、いや、俺、弟と食べるって言ったし」 仲良くなったと言ってた割には、あたふたする雅実。 寺島は、そんな雅実の横に腰を下ろした。 「君が、雅実の弟クン?はじめまして、寺島晶です」 「え、あ、佐々木雅人です」 「弟クン、一緒にお昼い?」 「雅人でいいよ。ってか座った時点で、一緒に食べる気満々じゃん」 「ははっ、バレた?」 「それにしても、それお弁当?でっかいタッパー3つって…」 「育ち盛りの部活生なもんで。コレでもたんねーけどな」 「マジか?!」 雅実を挟んで会話をする俺と寺島。 寺島は初対面でも感じが良く、やはり俺が思ってた通りイイ奴そうだ。 「雅実から双子って聞いてたけど、あんま似てないのな」 「俺たち、二卵性だから」 「へー。じゃあ、双子でよくある"もう一人の感覚が分かる"的なことはないんだ」 「ないない。全くない。俺的には、あんなの一卵性でも疑わしいって思ってるよ」 「ふーん。それにしても、二人とも弁当、美味そー!」 「ああ、雅実のお弁当は美味いゾ」 「え!?雅実が弁当作ってんの!?」 「ん"、う、うん」 俺と寺島の会話には入らず、下を向いて黙々とお弁当を食べていた雅実は、急に話しかけられビクッとして慌てて頷いた。 「お、ピーマンの肉詰めとかあんじゃん!一個もーらい!」 「ちょ、ちょっ!!」 寺島は狙っていたかのように雅実のお弁当箱から半分に切ってあったピーマンの肉詰めをつまみ上げ、パクリと一口で食べた。 「うん、美味い!」 「だろー!昨日、雅実が作ってくれたんだけど、出来たてとかマジ美味いから!」 「えー、俺も出来たて食いてー……で、もひとつもーらい」 "え、あっ"と慌てる雅実を尻目に、寺島は"玉子焼きも美味そう"と言ってちゃっかり玉子焼きも食べていた。 どんどん減っていく雅実のおかず。 「てらじまー、雅実のおかずなくなんじゃん」 流石に可哀そうだと思い、俺のお弁当箱に1つ残っていたから揚げを雅実のお弁当箱にいれ、寺島に文句を言った。 「ゴメンゴメン!つい美味くて。代わりに、スニッ〇ーズやるからさ、許して雅実」 そう言って、寺島はコンビニ袋からス〇ッカーズを2本だし雅実に渡した。 「い、いや、いいよ、寺島!」 「遠慮すんなって」 「で、でも……」 「そうそう、貰えるもんは貰っとけ。それに、雅実スニッカー〇大好きじゃん」 「そ、そうだけど……」 「雅実が貰わんなら、俺が貰うゾ!」 「え、なんで雅人?!」 「雅実のモノは俺のモノ!俺のモノは俺のモノ!」 「弟、リアルジャイアンかよ!」 「わ、分かった!貰うよ!」 俺が雅実の手に置かれた〇ニッカーズを取ろうと手を伸ばすと、雅実は慌てて俺と反対側のブレザーのポケットに隠した。 「あ、ありがと、寺島」 「こっちこそ、おかずくれてありがと!」 「"くれて"って言うか、寺島が勝手に雅実のお弁当箱から取ったんだけどな」 「えー、そういうこと言うー。俺、雅人クンきらーい」 「デッカい男がそんな顔しても、可愛くねーよ」 「まさみ~、お前の弟が俺のこといじめるよ~」 「ちょ、て、寺島!」 「てらじま〜、俺の兄ちゃんにくっつかないでくれる~」 「ま、雅人まで!」 俺と寺島は、雅実の腕を左右で取り合って、昼休みが終わるまで雅実を困らせたのだった。 この日を境に、俺たちのランチタイムに寺島が加わるようになった。 そしてそのランチタイムの間、雅実は終始落ち着きがないのだった。

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