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第1話

 「そろそろお別れだな」  美しい白い手が、深く皺の刻まれた草間の顔を包み込んだ。草間の日に焼け、干割れた肌にほろほろと落ちてこぼれた真珠のような粒が伝う。  「駄目です。どうか私をおいて行かないでください」  「泣くな、もう十分に生きた。ありがとう」  「お礼の言葉など要りません、ただ生きていてください」  落ちる涙をとめる術を持たない男は、その美しい男の手を取り自分の手の中に包み込んだ。愛していた、誰よりも。愛されていた、誰よりも。

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