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第4話

 「信宏さん、干してある大根を今日は煮付けました。魚を少し川で捕まえて参りましたから焼きましょうね」  「川?どこにあるんだ?」  「神社の向こうにありますよ。ご存知なかったのですか?」  白亜は鈴の様な声で笑う。二人でいる時間がこれほど暖かく、楽しいものだとは草間は想像だにしていなかった。日が経つにつれ足の具合は良くなる、この足が動くようになったら白亜はでていくのだろう。そう考えるだけで草間の気持は重くなっていった。最初の数日は腫れあがったあしのために立ち上がることも出来なかったが、一週間が経ち十日が経つ頃にはすっかり良くなっていた。もう立ち上がるのにも苦労はしないくらいだ。  「寒いですから風呂の準備をしますね」  白亜は家の外に廻り風呂のかまどに薪をくべる、すぐに準備できますと外から声をかけてきた。白亜は不思議な青年だった。今にも折れそうな細い腕をしているのに草間でも重たい荷物を楽々と抱える。透けるような肌は陽の光を反射し輝く、陽に焼けることもない。  「背中を流しましょうか」  「はっ、はくっ」  振り返るとそこに半裸の白亜が立っていた。風呂桶の淵に手をかけて立ち上がりかけていた草間は驚いて風呂に身体を沈めた。水を跳ねる大きな音がした。  「大丈夫ですか?」  「いっ、いい。いいから」  心配そうな顔をしてそばに寄ってきた白亜が手を差し伸べてきた。白亜は浴槽の草間の身体に視線を落とすと慌てて目を逸らした。頬がほんのりと赤く染まる。下を向き少し困ったような表情を浮かべ、そして意を決したように顔を上げた。  「信弘さん」  「違う、これは。白亜、そうじゃない」  「あなたは、私のことをどう思っているのですか?」  その問いに答える代わりに草間は白亜の手を掴みぐいと近くへと引き寄せた。湯が跳ねて白亜の髪を、身体をしとどに濡らした。 「白亜、これからもそばに居てくれ、一緒に暮らしてくれないか?」  白亜は何も答えずただ何度も頷いた。  「白亜、こちらへおいで」  「もう少しだけ、片づけてから」  「明日にしないか?今夜から一緒に」  戸惑い下を向いてしまった白亜の手をとると床へと誘う、雪明りで明るいその夜に二人はその肌を重ねた。

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