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とりあえずキスさせて?
人のいなくなった教室で机を向かい合わせにして、教科書とノートを開く。手を伸ばせば前髪に触れそうなほどの距離に、なんだか心臓がうるさくなった。
ああもう、ムカつく。無視だ、無視。
けど、そんな俺の意思とは無関係に、どんどん大きくなる鼓動のボリューム。
化学式をノートに書く手を止めて、ちらりと目線を上げてみる。
「ッ!」
「どうした?どこか分からない?」
かち合った視線。
碧い瞳が俺を射抜く。
一瞬だけ、心臓が止まった気がした。
「な、んでもねえよ!ほら、続きさっさとやれって!」
「ああ、その前に…」
碧い瞳が目の前にある。頬を包み込む手のひらが熱い。
あ、やっぱり心臓動いてた。でもやけに速い。
「とりあえずキスさせて?」
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