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【番外編】イルミネーションよりも
12月24日。世間様はクリスマスイブ。あっち見てもこっち見てもカップルばっかで、正直うんざりする。
「…バカだな、ほんと」
クリスマス休暇にはこっちに来るって言ってたくせに、今俺の隣には誰もいない。部活もない終業式の今日は、双子も早々に帰った。
久々に一人の帰り道。いつもなら考えないあいつの事ばっかり頭に浮かんでくる。いや、違うか。考えないようにしてたんだ。
「…くそ、なんかムカついてきた」
一言文句を言ってやろうとスマホを取り出して、通話画面を表示させる。すぐにあの声が聞こえてきて、すう、と息を吸い込んだ。
けど、言いたかった言葉が出てこない。
『ダイスケ?』
「っ、い、ま…何してるかと思って」
『ああ、人を待ってるところだ。そろそろ来るはずなんだが…』
「…ふうん」
吸い込んだ息を吐き出すと、白く煙る。一気に重くなった足をなんとか進めると、ふと違和感に気付いた。
なんか、いつもよりクリアに聞こえる。
それに、あっちは夜中のはずだ。そんな時間に人を待ってるって…?
『ずっと前から約束してたからな、会えるのを楽しみにしてたんだ』
嬉しそうな声。ムカつく。俺だけがこいつに会いたいみたいじゃん。なのに、こいつは今から誰かと過ごすのかと思ったら、今度は胸が苦しくなってきた。
そんな自分が悔しくて早足で歩くと、いつの間にか家の近くまで来ていた。
「あっそ、勝手にやってろボケ」
『そうだな……ああ、やっと来た』
ほんと、バカみたいだ俺。最初からわかってた事なのに。
じゃあな、と口に出そうとして、俯いていた顔を上げる。
「…………なん、で………」
『おかえり。これからデートしてくれないか?』
視線の先には、見覚えのある金色の髪と空色の瞳。風にコートをたなびかせて、こちらを見ながら電話してるあいつ。
うそだ、まさか、ありえない。
頭の中がぐるぐる回って、なんだかわけがわからない。
『なあ、返事を聞かせてくれないか、ダイスケ?』
頭の中に直接響く声。気が付けば、重かった足が駆け出していた。
「…っ、バカじゃねえのお前」
「クリスマス休暇には帰るって、約束しただろう?」
いつ来たのかとか、なんで連絡しないんだとか、聞きたい事はいっぱいなのに、言葉にならない。
欲しかった暖かさに包まれながら、プレゼントを用意してないから買いに行くという、二人で出掛けるための口実を考えた。
イルミネーションよりも、こいつの笑顔が見たいから。
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