19 / 101

その蒼に焦がれる

「グッモーニン!」 「お前…バカだろ」 朝一で届いていたメッセージには、既に俺の家の前で待っているという内容だった。幾分ストーカーみたいな感じだけど、まあ今は俺のコーチだからな、ロードワークに付き合ってくれるっつーんなら、一緒に行ってやってもいい。 曇り空の下にいたこいつは、太陽みたいに満面の笑みで俺を待ち受けていた。それが嬉しいだなんて悟られないようにわざと聞こえるようにため息をついて、一歩踏み出す。すぐに隣に並んだ足音に、胸の奥がきゅっとなった。 「…なんで、お前まで行くんだよ?」 「少しでもダイスケといたいから」 ザッザッというアスファルトを蹴る音で、俺の心臓の音を掻き消してくれて助かった。熱くなった頬は、首に掛けたタオルで隠す。 こいつはこうやって思った事をそのまま言葉にして言ってくる。正直困る。心臓発作で死にそうなくらいバクバクして、たんぱく質が固まりそうなくらいに体が熱くなる。 なんなんだよホント、いい加減にしてくれ。 ちらりと隣を走るこいつの顔を見上げてみれば、今は隠れているはずの空よりも綺麗な蒼い瞳に囚われた。 「っは、なに…っ?」 「いや、なんでもない」 くっそムカつく、なんでこいつ息切れ一つしてねえの?俺と同じペースで隣を走ってんのに、なんでだよ? 悔しい。そんだけ体の基礎から違うって事だよな。くそっ、俺だって頑張ってんだよ! 「お前…今日から、俺のロード、付き合え」 「喜んで」 碧い瞳が細められて、にっこりと笑う。なんでそんな嬉しそうな顔してんだよバカ… あーもうマジでこの余裕がムカつく。 少しだけ走るペースを上げても、ぴったりくっついてくる。息切れなんか全くない、涼しい顔。くそっ…… 「チッ…クソむかつくな…」 「何か言ったか?」 「べつにー!」 見てろ、絶対お前を追い抜いてやるんだからな。 だから、その目でちゃんと俺を見てろ。

ともだちにシェアしよう!