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二人のベクトル
【大介side】
「腰痛い」
「ハイ!」
腰が痛いと言えば、大事そうに優しい手付きでマッサージしてきて。
「喉乾いた」
「わ、わかった!」
喉が渇いたと言えば、冷蔵庫までダッシュで行って冷えたスポーツドリンクを持ってきて。
「痛くて起きれない」
「えっ!大丈夫か⁉︎」
ゆっくりと気遣いながらも抱き起こしてくれるから。
だから、もう一つわがままを言ってみる事にした。
「一人じゃ飲めない」
「…ッ!」
じっと見つめてみる。一気に赤くなる頬がおかしくて、可愛いなんて思った。
ほんとにこいつはご主人様大好きな忠犬だな。俺が喜ぶ顔を見て嬉しくなったり、辛い時には隣で支えてくれたり、楽しい時には一緒に尻尾振って。
重なった唇の隙間から流し込まれる冷たい液体をコクリと飲み込むと、そのフサフサした毛…いやいや、髪を撫でてやった。
「バーカ、そんなヤワじゃねえよ俺は」
「でも…もっと大事にしたかったのに、オレは…」
そう、一発ヤって待てが出来なくなったこのバカ犬は、あろう事かそのまま続けて二回目に突入して、俺の意識がヤバくなるまでずっと抜かずにいた。結局俺が三回くらい出したあたりで目の前が白くなって、気付いたらぎゅうぎゅうに抱きしめられながら寝ていて。
起きたら身体中が痛いしなんか色々飛び散っててカサカサ固まってるしで、シャワー浴びたくても行けないから仕方なく抱き上げられて連れて行かせた。一緒に入ると吠える口に不本意ながらキスして黙らせると、おとなしくベッドをきれいにしろというご主人様の命令に従う忠犬。
すっきりした体できれいに整えられたベッドに潜り込んで、もうちょっとこき使ってる←イマココ
「お前さ、俺の事なんだと思ってんの?」
「可愛い」
「殺すぞ。むしろ死ね」
昨夜さんざん俺を貫いたくせに今ではふにゃふにゃになったそこを思いっきり握りしめてやったら、声にならない声をあげてちょっと涙目になってる。やべえ、可愛いかも。俺ってそんな趣味あったのか?
触り心地のいい金色の髪を撫でて、そのまま引き寄せてやる。近くで見てもやっぱかっこいいんだよなこいつ。
「俺はお前の専属トレーナーになる男だ。そんな奴がこれくらいで音を上げると思ってんのか?」
ニッと笑かけてやったら、気付けば整った顔の向こうに天井が見えた。
…あれ?
「そうだな。じゃあこれからもっとオレの体を知ってもらわないと」
「え、あ、いや…ほら、まだこれから勉強するし?」
「日本では習うより慣れよというんだろ?」
どこで覚えてきたんだよ!と文句を言おうとした俺の唇が塞がれて、もういいってくらいこいつの気持ちを思い知らされた。
俺はまだまだこいつの事を知らないし、こいつも俺の事を知らない。あと二週間もしたらこいつはアメリカに帰って、次はいつ会えるのかすらわからない。
それに不安にならないわけじゃない。でも、信じたい。俺の夢とこいつの夢とが向かう先で、きっと一つに交わるんだって。
だからその時までは、今出来る事を全力でしようと思うから、だから今は全力でこのキスに応えよう。
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