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第38話 朝
窓から射し込む朝の色。
瞼に当たる陽光に顔を顰めると、裕翔はそれを避けるようにゴロリと寝返りを打………とうとして、身体が動かないことに気づいた。
背中がやけに温かい。
それに、耳元で聞こえる誰かの寝息。首に掛かる柔らかな息。
首の下に敷かれた硬いものに、腹に回された太い腕………
え……、ええ…と……………
抱き締められた腕の中で身体を回転させる。
直に肌が触れ合っている所為で、少し動いただけで変な所に刺激を感じてしまう。朝だというのに。
自分を抱き締めて寝こけているのは、ここにほぼ騙す形で裕翔を連れ込んだ上司で。
なんとも平和な顔をして寝入っている姿は、その巨体を差し引かなくても可愛いかも、と思うけれど……。
俺、いつ寝たんだっけ……?
さあ眠りましょう。おやすみ、と挨拶した記憶がまったく甦ってこなくて、些か戸惑いを覚える。
───にしても、幸せそうな顔して、さ……。
一緒に寝たのは多分二度目だけれど、寝顔を見たのは初めてだ。
前の時は仕事の日で、松崎が先に起きて朝食の用意をしていたから。
今日は日曜、連休二日目だから、松崎も呑気に眠っているのだろう。
こんな無防備な松崎を見たのは初めてで、裕翔の胸につい悪戯心が湧き上がる。
掛け布団から手を出して、鼻をきゅっと摘む。
松崎は苦しいのか眉根に皺を寄せて暫く、口をパカッと開けた。
その様子に裕翔はクスクスと小さな笑い声を零す。
今度は口を塞ごうと反対の手を布団から出して、
「………裕翔クン…?」
パシッとその手を押さえられた。
「あ………。……えへへ、起きちゃいました?」
「起きちゃいましたね」
「うー…んと、おはようございま〜す♡」
誤魔化すように、かわいくかわいく演じる裕翔をそれ以上責めることはできなくて、松崎は諦めの息を吐くと苦笑い。おはようと力弱く返した。
裕翔の方は、それで全部チャラになったものと判断したらしい。
松崎の腕の中から抜け出すと、布団をチラリと捲って中を確認する。
「えぇ………っと………」
肌に当たる感触で、なんとなくは分かっていたけれど。
「パジャマ、着てないんですけど……」
「………ああ。それ、なぁ…」
そっと上目遣いで訊ねると、困った顔で笑いかけられた。
「せめてパンツくらい穿かせてくれるとか…」
「悪ぃ。そこまで気ぃ回んなかったわ」
俺も結構飲んで酔ってたからさ、とやっぱり困った顔をして、松崎は裕翔の頭を軽く撫でる。
「俺、いつの間に寝ました? 寝入りばな覚えてなくて」
「ああ…。……お前、俺が風呂からあがった時にはもうソファで眠っててさ、俺がこっちまで運んできて寝かせたんだよ。服も勝手に脱い…、……あれ? 櫻井?……櫻井ク〜ン?」
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