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最終話 二課の佐伯さん

「おう」 「佐伯さん、お疲れ様です」 休憩室に入ってきたのは、裕翔から見れば先輩、松崎からはひとつ下の後輩の、佐伯だった。 元ラガーマンの佐伯は、背丈は松崎に劣らず、横幅は松崎よりもしっかりしている。 「櫻井、俺にもコーヒー貰っていいか?」 松崎の前と裕翔の手にコーヒーの入ったカップを確認してから、佐伯は裕翔に声を掛けた。 「はい。ブレンドですか? 砂糖とミルクはどうします?」 裕翔は取り敢えず、自分の分を置いてしまおうとカップを手にテーブルに移動する。 ───と、 「オイ佐伯ぃ。テメェの分はテメェで淹れろや」 松崎の突然の一喝に、佐伯はデカイ図体を揺らし、ヒッ!と悲鳴をあげた。 ヤクザがいる!職場にヤクザがいる!! 「テメェがコイツの淹れたコーヒー飲もうなんざ、千年早ぇんだよ」 「人間が千年も生きられるわけ無いでしょ。何言ってるんですか、貴方は。佐伯さん、気にしなくていいんですよ」 気にするなと言われたところで、鵜呑みにしたら自分の生死に関わる! しかし、何故この後輩はヤクザの迫力に圧されもせずに、堂々と言い返すことが出来るのか。 命が惜しくないのか!? 「あぁ?お前は俺にだけコーヒー淹れてりゃいいんだよ」 ほら、更に怒らせた。 「もう、松崎さん何言っ…うわぅっ──?!」 椅子から乗り出した松崎の腕が伸びて、裕翔の腹に回る。そのまま力強く引き寄せられて、裕翔の身体が松崎の膝に乗り上げた。 松崎の腕の中にすっぽり収まった裕翔は、突然のことに驚いて、顔をブワッと赤く染める。 「もぅっ、アンタばかかっ! 俺コーヒー持ってんだぞ! 零れたらヤケドするだろーがっ!」 「うるせぇ。お前は俺専用なんだから他の奴の面倒は見なくていいんだよ」 「我儘言うな! こっちは仕事でやってんだから! 子供じゃないんだから、くだらない事でヤキモチ焼かないの!」 この新人、どうやら仕事で自分にも愛想よくしてくれているらしい。 まあ、美人に優しくされるのは、仕事だからだとしてもやはり悪い気はしないので、それはそれで役得だとは思うのだが………。 しかし、指導者として櫻井に付いているこの先輩。自分にもう一人の(ゴツい方の)新人を押し付けておいて、美人を独り占めとは。それは職権乱用と言わないだろうか。 確かに、事細かな育成プランに、成長過程の確認は怠っていないから、丸投げという訳ではないのだが。 出来れば今からでも、櫻井と垣内をチェンジしてもらうことは……… 「ぁっ、…やん、……ン、…あっ、ダメだってば、……あ、やぁん…っ」 「───っ!!」 「やっ、ちょっ…! ん……、松崎さんっ、もっ…いいカゲンに………  っ──、ヤダッて言ってんだろ! 職場で盛るなっ、この────  セクハラゴリラーーーっっ!!!」 どうやら新人チェンジは無理らしい。 それどころか、今はここでコーヒー休憩を楽しむことさえも。 佐伯は二人に気付かれないよう静かに退出し、そっと扉を閉めた。 用を足して追い付いてきた垣内の肩をポンと叩き、行き先を変えさせる。 俺は何も見てない聞いてない─── 命を守る呪文を頭の中で唱えて。 『ぁっ、…やん、……ン、…あっ、ダメだってばぁ』 脳内リピートされた裕翔の艶声に反応しそうになった己自身を、佐伯は必死で律したのだった。       ーーおわりーー    * * * * * * * * * * * 『部下と上司のタクティクス』 これにて完結です。 最後、佐伯さんで締めちゃったけど、大丈夫だったかな💦 実はこの佐伯さん、別の真宮寺作品に登場済みのキャラクターだったりします。 と言うのも、裕翔と松崎さんの会社、その別作品の主人公の勤め先だったりするんです。 イケゴリ攻めが浮かんだ際、あの子の会社の営業部、一課が爽やか、二課がマッチョだったよな…と思い当たり……。 完結作と同じ舞台での物語、その作品を好きだと言ってくださっていた方たちにも懐かしく思い出して頂けるかな、なんて。ちょっとしたお遊びでした。 時間軸としては、本編終了翌年の秋口かな。 ちなみに、営業一課長とシステム部長もあちらで生まれたキャラクターです。 初登場(登場…してる?)の人事部長。彼の髪が薄いのは、実体験からです。 私OL時代、人事部所属だったのですが、人事は先輩から上司まで男性陣皆頭が寂しいことになっていまして。 人事は春闘でも会社側として社員会とやり合わなくちゃいけないし(自分だって社員会員だし給料上げて欲しいのに)、誰を異動させるか決定したり、上層部とも中途半端に親しく関わらなくちゃだし、やっぱり神経使うのかなぁ…と他人事に思って見ていました。私はフサフサです。 なかなかの長編なので、『ぜひ読んで下さい〜♪』なんて気軽に宣伝できないので作品名は控えますが、アレかな?と気付いて頂けたら嬉しいです。 報告して頂けたらローリングして喜びます! ‹‹\(´ω` )/››‹‹\(  ´)/››‹‹\( ´ω`)/›› 書くのが苦手なML(オトナ物)に加え、初めてのゴリラ攻め(普段はシュッとしたイケメン攻めばかり・汗)でしたが、裕翔が新入社員でまだまだ子供でいる所為か、はたまた松崎さんがゴリラだけど髪を伸ばせば男前だからなのか、ラストまで楽しく書き切ることが出来ました。 やっぱりラブコメは書いてて楽しい٩(*ˊᗜˋ*)و 読んでいても、楽しい!と感じて頂けていればとっても嬉しいです。 連載中は、お気に入り登録、リアクション、どうもありがとうございました。 コメント、飛び上がるほど嬉しかったです! ヽ(*>∀<)ノ♡ 完結した後も、いつでもコメント、お待ちしておりまーす♡(๑✧∀✧๑)ギラギラ それでは、最後まで裕翔と松崎、真宮寺にまでも、お付き合い頂きありがとうございました。 別の作品でもお会いできれば✨Happy✨です! 2018-12-11(Tue) 真宮寺うさぎ🐰

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