静かな部屋にゆっくりと流れる張りのある乾いたピアノの音。 ベッドサイドの灯りが隼人の整った横顔を映し出し、流れるノクターンの曲に合わせるようにゆっくりと揺れた。 「……ッ……そこ……ッ」 「気持ちいいだろ？」 「……やめろっ……くすぐったいッ」 「素直じゃないな、相変わらず」 俺を見下ろす隼人が舌でなぞるように首筋を辿ると、くすぐったいような気持ちいいような不思議な気分になる。 そして、耳元に寄せたその舌で唇で舐め上げると、快感で身体が震えた。 「隼……人……ッ」 「甘い声出して……可愛いな。あのさ……分かってると思うけど、13年分だから今夜は寝かせないからな」 13年前に告白をされてふったはずの男が、今俺を愛おしそうに見下ろしている。 人生何があるか分からないから面白いと言う奴もいるけど、まさかこんな形でこの男にまた関わるなんて……まさに、人生何があるか分からない。 「航平……」 「な、なんだよ……」 「今、何か他のこと考えてたろ」 「は？いや？」 「嘘つけ。俺のこと以外考えるなよ」 そして、13年ぶりに判明したことがある。 「おまえな……ッ……て、痛ッ……！」 それは、こいつは独占欲がめちゃくちゃ強いこと。 何に嫉妬してるんだか知らないけど、さっきからその何かに嫉妬して、俺の乳首を思いっきりつねられた。 「痛いとか言って、乳首もう勃ってるじゃん」 「おまえの触り方が厭らしいからだって……ッ」 どうにか誤魔化しながら、その手から逃れようとしても火照った身体に与えられる刺激に反応しないはずもなく…… 痛いのに、気持ちいい…… なんなんだこれ…… 俺はマゾなわけじゃないのに。 「航平、身体ビクビクしてるの無意識？口では悪態ついても身体は正直ってわけか。おまえってほんと……」 理想的な身体だな……なんて、ため息混じりに吐き出すと、悪戯につねっていたそれを口に含み一気に吸い上げた。 「んあッ……やめ……ッ」 ビクンと身体が弓なりにしなり、鼻で笑った隼人の舌先はそれをねっとりと舐めまわす。 「……ッ……気持ちいいんだろ？」 「……ッ……ん……は……ッ……わかん……なッ……」 まさか自分がこんなに敏感な身体だったなんて予想外で、本当に自分で自分の身体が分からない。 でも、隼人にはやっぱり違った意味で捉えられ、今度は歯を立ててその突起をガリッと噛まれた。 「んんッ……！」 「いい加減素直になれよ」 「別にッ……違うって……だから……ッ」 快感で頭がふわふわして、もう弁解する思考能力もない。 そんな俺を攻め立てる隼人の手が下半身に伸ばされると、既に熱く形を変えている俺のを握ってくる。 触れたことでまた無意識に身体がビクついて、上と下同時の刺激に一気に吐精感が込み上げた。 「……あッ……やは、とッ……もうイ……くッ」 「……ッ……ここ、先走りでぬるぬるだぞ。我慢しないでイけよ……」 我慢なんてするつもりもない。 与えられる刺激に身体がついていかないだけで、もうとっくに…… 「……ッ……いいッ……イ……く……んあああッ！」 未知の領域に足を踏み入れるように、俺はこいつに溺れていく。 そして扱くスピードが速度を増す前に、俺は急速に高みに登りつめ、荒い呼吸と共に隼人の手の中に白濁を吐き出した……