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第10話
僕に惚れる理由が解らない。
見た目がいい訳でもない。ずっとつれない態度をとりつづけていたのに。
「寂しそうにしている冴木が気になった。声を掛けたら無視されて、絶対に仲良くなろうと思った」
あれが逆に燃え上がらせてしまったようだ。
「態度はツンとしているけど、日がたつごとに心を許してくれているのを感じて、それが嬉しかった」
「そうなんだ」
「さっき画像をみせただろう? 時折見せる楽しそうな表情が可愛くてな。気がついたら愛おしくなっていた」
「……もういいよ」
恥ずかしい。
これ以上は言わないでほしい。
だって、素直に彼の気持ちが嬉しいと思っているのだから。
「顔、真っ赤だな」
「え、ちが、これは……」
顔を隠そうとするが、暖かな腕に抱き寄せられた。
高沢の匂い。見上げれば顔がすぐ近くにある。
「俺のこと、好きになって?」
もう、これ以上は俺の心が持たない。
「ほら、パーティ、するんでしょ?」
離れろと彼の身体を押した。
「そうだった。じゃぁ、冴木も言って。あの言葉を」
とにかく、今はこの甘い雰囲気から逃げ出したい。だから素直にあの言葉を口にする。
「高沢、トリック・オア・トリート」
すると、ポケットからカラフルな包装紙のものをとりだす。
用意してあった事に気が抜けた。例の言葉を言ってから気が付いたんだけど、悪戯されたかったのかと思って。
ポケットの中から取り出したカラフルな包装紙の中身は飴玉で、それを手渡されるのかとおもいきや、高沢は自分の口の中へといれた。
「え?」
まさか悪戯を望むのかと彼を見れば、唇が触れて口の中にイチゴ味の飴玉が入り込む。
間近で微笑む高沢の顔。
「んっ」
キスされた。口元を押さえて目を見開く。
「ハッピーハロウィン」
かたまる僕に、高沢はウィンクをしてみせた。
<了>
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