10 / 10

第10話

 僕に惚れる理由が解らない。  見た目がいい訳でもない。ずっとつれない態度をとりつづけていたのに。 「寂しそうにしている冴木が気になった。声を掛けたら無視されて、絶対に仲良くなろうと思った」  あれが逆に燃え上がらせてしまったようだ。 「態度はツンとしているけど、日がたつごとに心を許してくれているのを感じて、それが嬉しかった」 「そうなんだ」 「さっき画像をみせただろう? 時折見せる楽しそうな表情が可愛くてな。気がついたら愛おしくなっていた」 「……もういいよ」  恥ずかしい。  これ以上は言わないでほしい。  だって、素直に彼の気持ちが嬉しいと思っているのだから。 「顔、真っ赤だな」 「え、ちが、これは……」  顔を隠そうとするが、暖かな腕に抱き寄せられた。  高沢の匂い。見上げれば顔がすぐ近くにある。 「俺のこと、好きになって?」  もう、これ以上は俺の心が持たない。 「ほら、パーティ、するんでしょ?」  離れろと彼の身体を押した。 「そうだった。じゃぁ、冴木も言って。あの言葉を」  とにかく、今はこの甘い雰囲気から逃げ出したい。だから素直にあの言葉を口にする。 「高沢、トリック・オア・トリート」  すると、ポケットからカラフルな包装紙のものをとりだす。  用意してあった事に気が抜けた。例の言葉を言ってから気が付いたんだけど、悪戯されたかったのかと思って。  ポケットの中から取り出したカラフルな包装紙の中身は飴玉で、それを手渡されるのかとおもいきや、高沢は自分の口の中へといれた。 「え?」  まさか悪戯を望むのかと彼を見れば、唇が触れて口の中にイチゴ味の飴玉が入り込む。  間近で微笑む高沢の顔。 「んっ」  キスされた。口元を押さえて目を見開く。 「ハッピーハロウィン」  かたまる僕に、高沢はウィンクをしてみせた。 <了>

ともだちにシェアしよう!