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第9話

 いつのまにか中へと入り込み、僕との距離が縮まっていた。 「俺に、お菓子を渡さないでくれ」  しかも、変な事を言い出した。 「それをいうならお菓子をよこせじゃ……、あっ」  いたずらをさせろと言いたいのか。  それって……、つまり、そういうこと?  意味に気が付いてしまい顔が熱くてたまらない。 「い、今、お菓子、用意するからっ」  慌てて部屋の中へと引き返そうとしたら、そのまま腕を掴まれ引き寄せられた。  ぱたんとドアが閉まり、僕の身体は後ろから高沢にだきつかれている。 「俺の愛おしい赤ずきん」  頭巾をかぶせられ、首にふっと息がかかる。  やっぱりそういうことなのか。緊張して身体を硬くした。 「悪戯、させてもらうよ」  と腕の脇をくすぐりだした。 「や、脇はだめぇっ」  かなり弱いんだ、そこは。くすぐられて涙が浮かんできた。 「うっ」  高沢の手が止まる。口元を押さえて頬を赤く染める。  笑いたくて我慢をしている、そんな風に見えた。 「酷い」  やっぱり警戒した方がいいかと思っていたら、 「好きだ。君の全てを食べてしまいたいくらいにな」  さりげなく首筋を舐められた。優しいと思った男は狼さんでした。

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