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第27話 不協和音

翌朝は、朝ご飯を少なめに食べた。 いつものように、僕がまだ食べてるうちに悠ちゃんが準備を済ませて先に家を出る。慌てて悠ちゃんにお弁当を渡すと、僕も急いでお皿を洗って歯を磨き、鞄を持って悠ちゃんの後を追いかけるように小走りで駅に向かった。 駅に着くとすでに拓真が来ていた。少し身を屈めて荒い息を吐く僕の頰に、冷たい物が当てられる。 「ほい、これ。まだ少し時間あるから、ちょっと休憩な」 僕の目の前にペットボトルの緑茶が差し出された。僕は素直に受け取って、一口飲む。冷たいお茶が喉を通って、気分がとてもすっきりとする。 「はぁ…、美味しい。ありがと、拓真」 「絶対、急いで来ると思ったんだよな。電車、遅れてもいいからゆっくり来たらいいのに。特に今日なんて病み上がりなんだからさ〜」 「まあ、そうなんだけどね…。つい、走っちゃうんだ。ふぅ…、もう大丈夫だから行こっか」 「そっか?無理するなよ?気分が悪くなったら、すぐ俺に言えよ?」 「出た…心配性の拓真。ふふ、拓真がいるから大丈夫だよ」 「…っ、お、おう…」 僕は、拓真に笑ってペットボトルを鞄に入れる。階段を拓真に背中を支えられながら登って、ホームに降りたところで、ちょうど電車が入って来た。 いつもの車両のいつもの場所で、拓真に守られながらドアに凭れる。チラリと視線を横に向けると、悠ちゃんもいつもの場所に立っていた。 でも、今日は週明けのせいなのかわからないけど、いつもより混んでる気がする。拓真が頑張って空間を作ってくれていたけど、だんだんと狭まり、拓真と僕の身体が密着するほど、ぎゅうぎゅう詰めになってしまった。 「ちっ、なんでこんな混んでんだよっ。玲…悪りぃ、大丈夫か?」 「僕は大丈夫だよ。拓真こそ苦しくない?」 「俺は頑丈だから平気だ。なんなら、もっと俺に凭れて腕を回してもいいからな。揺れると危ねぇし」 「…え…うん…」 拓真は両手を強くドアに突っ張っていて、前みたいに突然揺れても僕を支えれない。僕も、倒れて拓真に迷惑をかけるのは嫌だし、それなら…と、倒れないようにそっと拓真の腰に腕を回した。そうすると、必然的に拓真の胸に顔を押し当ててしまうことになる。僕の耳に聞こえる拓真の規則正しい心音と、体温の温かさに不思議と落ち着いて目を閉じた。 しばらくそうしてると、駅に到着するアナウンスが流れる。その音声にハッと目を開けた瞬間、悠ちゃんがこちらを見ていることに気付いた。 すごく怖い顔をして、拓真を睨みつけている。 ーーえ…、どうしたの?もしかして昨日のこと、怒ってるの…。 悠ちゃんのそんな顔を見てると、不安でドキドキしてくる。僕はそっと拓真から腕を外して身体を離した。 「ん?玲、どうした?」 「もう駅に着くから…。大丈夫、ありがと…」 僕の顔を覗き込んできた拓真にそっと笑う。拓真は、「そっか…」と呟いて、ふわりと笑った。

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