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第26話 不協和音
僕は、顔だけを動かして悠ちゃんを見る。
「なに…?」
「薬、飲んでないだろ。あと、傷の手当をするから」
「ん…」
頷いてゆっくりと身体を起こす。悠ちゃんの隣に座ると、ふたを開けたペットボトルと薬を、僕の手に持たせた。
僕が薬と水を飲んだのを見て、悠ちゃんがペットボトルを受け取る。それを机の上に置いて、今度は額の傷に薬を塗ってガーゼを当てた。
「おまえ、普通に頭を洗ってるけど、痛くないのか?」
「うん…、もう大丈夫だよ。ガーゼも貼らなくていいのに」
「ダメだ。おまえは色が白いから傷が目立つ。きれいに治るまで、俺が薬を塗ってやるから、絶対に傷口を触るなよ」
「わかった。ありがと…」
「それにおまえは…。ったく、ちょっと待ってろ」
大きく息を吐いて悠ちゃんが出て行く。すぐにドライヤーを手に戻って来て、僕の髪の毛を乾かし始めた。
僕は目を閉じて、髪に触れる悠ちゃんの手の感触を感じていた。髪の毛に挿し込まれる手が気持ちいい。あまりにも心地良くて、僕の頭がカクンと揺れる。
しばらくすると、悠ちゃんがドライヤーのスイッチを切って、僕の髪の毛を撫で付けた。「終わったぞ。ほら、もう寝ていいから」と言う低めの声をぼんやりと聞く。
僕はのろのろとベッドに横たわると、半分目を閉じながら「ゆ…ちゃん…、ありがと…」と呟いて、眠りについた。
眠りに落ちる瞬間、頰に柔らかいものが押し当てられた気がしたけど、なんだったんだろう……。
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