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第25話 不協和音
僕は朝の残りと唐揚げを約束通り食べて、デザートに楽しみにしていたケーキも食べた。
その結果、気分が悪くなって、全部吐いてしまった。
ケーキを食べ終わってすぐに胃がせり上がり、トイレに駆け込んだ。胃の中の物を全て吐いた後に、咳き込みながらその場に座り込む。
「ふ、ふ…、調子に乗って…僕ってほんとバカだ…。これじゃあ、ますます悠ちゃんに嫌われてしまう…っ」
僕は、自分で自分が情けなくなって、ぽろりと涙を零す。悠ちゃんがお風呂に入ってる時で、気付かれてなくて良かった。
トイレットペーパーで涙と鼻水を拭くと、フラフラと立ち上がり、トイレを出てリビングに戻った。
ケーキのお皿とフォークを洗っていると、お風呂から出た悠ちゃんが入って来た。
冷蔵庫から水のペットボトルを出して、ふたを開けようとした手を止める。眉間にしわを寄せながら僕の頰に指の背を触れさせて、聞いてきた。
「玲?気分が悪いのか?顔色が悪い…」
僕は慌てて悠ちゃんから離れて、無理に笑って見せる。
「だ、大丈夫っ。僕もお風呂に入って来るねっ」
悠ちゃんに顔を見られないように、俯いたまま悠ちゃんの傍を通り過ぎてリビングを出た。
着替えを持って洗面所に行き、もたもたと服を脱いで風呂場に入る。コックをひねってシャワーを頭から浴びる。口を開けて口内をすすぐと、椅子に座ってゆっくりと息を吐いた。
しばらく椅子に座って休んでいたけど、あんまり時間がかかると不審に思った悠ちゃんが来るかもしれない。
僕は急いで頭と身体を洗うと、お湯に浸からずに風呂場を出た。
パジャマがわりの長袖Tシャツとスウェットを着て歯を磨く。洗面所を出ると、リビングには顔を出さずに直接部屋に入った。
悠ちゃんの部屋から灯りが漏れていないから、まだリビングにいるのだろう。
ーーこんな情けない僕のこと心配してくれる?それとも、別になんとも思わないかな…。
ベッドにうつ伏せで寝転んで、悠ちゃんのことを考える。まだ濡れている髪の毛のせいで、枕に水分が染み込んで冷たい。
ーー喉が渇いたな…。でも、リビングには悠ちゃんがいるから入りづらいし…。
うだうだと悩んでいると、ドアをノックする音と同時に「入るぞ」と声がした。
ドアがガチャリと開いて悠ちゃんが入って来る。チラリと目をやると、水のペットボトルと小さな袋を手に持っている。
悠ちゃんがベッドの端に腰掛けて、「玲…」と僕を呼んだ。
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