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第103話 愛月徹灯

小鳥のさえずりと僕の唇に何かが触れる感触で目が覚めた。すぐ目の前にある、少しつり上がった二重の瞳に僕が映っている。目覚めてすぐに愛しい人の温もりを感じる幸せに、僕はふわりと微笑んだ。 「おはよ…。なぁに?」 「おはよう。ん?玲はどこも美味そうだな、って見てた。ほら、頰は白くてモチモチとしてるし、唇は小さくてプルンとしてるし、見てると食らいつきたくなる」 「そうかなぁ?普通だよ?でも、そう思ってくれるの、嬉しい。いいよ、いっぱい食べて?」 「もう食べてる」 悠ちゃんがそう言って笑って、僕の頰と唇にキスをした。 今日は午前中に課題を済ませて、昼から近くの観光地に行くことになっていた。 ここに来てから、涼さんが予定を立ててくれて、毎日がとても楽しい。 ーー観光地だとお土産が売ってるかな?悠ちゃんとお揃いの物がほしいなぁ…。 昼からの観光が楽しみで頭がいっぱいになってしまい、僕はあまり課題に集中出来なかった。そんな僕に気づいて、悠ちゃんが小さく息を吐いて笑う。 「玲、今日はここまでにして散歩にでも行くか」 「え、いいの?うんっ、行きたい!」 「またすぐに出かけるからちょっとだけな。ということで涼、行ってくるわ。すぐに戻ってくるから」 ノートや筆記具を片付けながら、悠ちゃんが涼さんに言う。 「気をつけて。俺はもう少し宮野くんの課題を見てるから。しかし君、まだまだ残ってるよね。今から気合い入れてやるよ」 「えっ、今までのは気合い入ってなかったんすか?結構厳しかったと思うんですけど…」 「ほら、そんな風に思ってるようじゃダメだな。さあ、やるよ。悠希と玲くん、気をつけてね」 「俺も玲と散歩…」 「おまえは昨日、行っただろうが。さっさと課題をやれ」 「そんなぁ…」 しょんぼりと俯く拓真に、「昼からは一緒に出かけるし、頑張ってね」と声をかけて、僕と悠ちゃんは玄関に向かった。

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