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第49話

†  †  †  † 「館石(たていし)、新崎はどうした?」 「今回の事が上にバレそうになったと、さすがに三田村(みたむら)組長が灸をすえたそうです。…表向きは、ですけどね」 「…あの狸オヤジ…、自分も傍観していたくせに棚上げか」 「それにしても彼らはさすがですね。貴方が欲しがるわけだ」 「まぁ最終的な段階になったら、アイツが首を挟んでくるだろうがな」 「それは彩綾会(さいりょうかい)の…、ですか?」 「あぁ。特にゼロのNo.2に手を出せば確実に出てくるはずだ」 「可愛がっているらしいですからね」 とあるビルの一室。 30代前半~半ば程の年齢だろうと推測されるダークスーツ姿の男が二人、質の良さそうな黒革のソファに座って煙草を燻らせていた。 館石と呼ばれた男は、エリートサラリーマン風の知的な容貌。だが、鋭く光る双眸がその印象を裏切っている。 そして、その館石を呼び捨てにしている男、高崎(たかさき)。 こちらは胸板も厚く、何かの格闘技を嗜んでいたとしても誰も驚かないだろう西洋人並みの体格。館石よりも若干背は高めで、見た目的には2人に共通点は見当たらない。 ただし、一つだけ間違えようのない共通点があった。 それは瞳の鋭さ、だ。 明らかに普通の一般人には持ち得ない力強さが、2人がどういう人物なのかを如実に知らしめていた。 そして、この2人と同じ独特の空気を持つ人物が、実は那智の周りにも一人だけいた。 その人物とは、彩綾会本家に籍を置く、現在は舎弟頭(しゃていがしら)の地位を持つ男。 更に、30歳になれば彩綾会の幹部に上がり、後に若頭(わかがしら)になるだろうと誰もが噂している人物。 彩綾会の幹部ともなれば、二次団体として組を持つ事が約束されているという、いわば組長となるべき男。 裏社会でも一目を置かれている若手筆頭のエリートだ。 ただし、那智を始めとして、裏高楼街に属する派閥の人間は誰一人としてそんな人物が身近にいる事を知らない。 というより、その背景事実を知らない。 この事実を那智達が知るのは、もう少し先の事となる。 ― 了 ― *-------------------------------------------------* 本編完結です! ここまでお付き合い下さり本当にありがとうございました! なんか続きそうに終わってますが、すみません、とりあえずここで完結とさせて頂きます! (二部を書くつもりでいたのですが、今はちょっと無理っぽいです;;) そして、ここから番外編が始まります。 それぞれの過去の出会い編から、現在に続く日常までです。 ちなみにこの番外編は、二部への布石が敷いてあったりします(数年前は二部を書くつもりでこの番外編を掲載したという・・・。二部どこ行った・・・)

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