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第22話
だけどそれは一瞬で、そうだったのかわからない。
いつもならしばらくそのままで、そして続けて2回目をすることもある。
けど今日は体内から先生のものが出ていくのを感じて、それっきり先生はベッドサイドに座って煙草を吸いはじめた。
僕は脱力はしていたけど、でもいつもほどの倦怠感はない。
いつもはたいてい何度もイかされて、最後はよくわからなくて寝てしまってるから。
もうしないんだろうか、休憩なんだろうか。
快楽の余韻がとけていくと思考もはっきりしてきて、どうすればいいのかわからずにシーツにくるまった。
「……シャワー浴びて来い」
慣れない煙草の匂いと沈黙に息苦しさを感じていたら先生がそう言ってきた。
そっと先生の背中を見る。
いままで言われたことのないことだった。
いつもは目が覚めてココアを飲んで、送ってもらって。
それだけだったけど、でもいまシャワーという言葉を聞いてひとつ気づいたことがある。
いまさらだけど自分で吐き出したり汗でべたついていたはずの僕の身体はいつも綺麗だった。
行為自体が怖くて、なにも考えてなかったけど―――先生が、綺麗にしてくれてたんだろうか。
本当にいまさらすぎるけど、訊けない。
動くことができない僕を先生が振り返って見る。
「トイレの隣が風呂だ」
「……は……い」
それでも戸惑ってしまう。
それにいま全裸だし……、このままお風呂まで行かなきゃいけない……んだよね。
「……身体べたついてるだろ。あと……今日、ゴム忘れたから」
「……え?」
先生は少し気まずそうに視線を逸らした。
ゴムを忘れた。
それが何を意味するのか、答えにいきつくのに数十秒かかって僕の顔は熱く火照った。
「……お前、出せるか」
「……え?」
「……」
なにを、って言いかけた僕に先生はため息をつく。
それに思わずビクッとしてしまってたら、先生は煙草の火を消して僕の方を向くと手を取った。
「シャワー浴びるぞ」
来い、と引っ張られる。
もしかして一緒にお風呂に入るのかな。
軽く頭の中がパニックになるけど、先生の手を振りほどけるわけがない。
どうしたらいいのかわからないままお風呂についた。
僕の家よりも狭いお風呂。
ユニットバスのそこは僕と先生が一緒にはいると窮屈に感じる。
「……っ」
どこに視線を向ければいいのかわからずにあちこちを見てたら急に冷水が頭上から降ってきた。
少しして温水になるけど、びっくりして僕は身体を竦ませる。
「壁に手をつけ」
不安はあったけど言われる通りにした。
もしかしたら先生はそんなに悪い人じゃないのかもしれない。
そう思いもするけど、なにをされるんだろうと怖さの方がやっぱり多くて、先生に背を向けながら唇を噛みしめた。
緊張していると先生の手が腰に触れてくる。
「脚開け。すぐ終わらせる」
「……は……い」
なにするんだろう。
やっぱり……またスるんだろうか。
困惑してると後孔に指が触れてきて、あっさりと指が挿入された。
「……っ」
グッと歯を噛み合わせる。
さっきまで先生のものが挿っていたそこは敏感になってて、指が動くたびに背筋に快感が走ってしまう。
先生の指は後孔をかきまわすようにしてた。
しばらくして指が抜かれてシャワーがかけられる。
そして、
「終わったぞ。ついでに身体洗っておけ。その辺にあるの適当に使え」
「……え?」
声を耐えるのに必死だった僕は先生の言葉を認識するのにすこしかかって、振り返ったときには先生は浴室から出ていってしまった。
浴室のドアが閉まって、向こう側に先生の影が見える。
どういうことかわからなくて戸惑いながらも、身体を濡らすシャワーにのろのろと身体を洗いだした。
いったいさっきのはなんだったんだろう。
言われたとおりに先生のボディスポンジを借りて、ボディソープを借りて。
―――あ、これ先生と同じ匂いだ。
そんなことに気づいた。
学校では気づくことがなかった香り。
ここへ来るようになって先生に抱かれるようになってから、僕が意識を飛ばしてしまったあと、先生はシャワーを浴びているようで。
起きたときに先生からこの匂いをかいだことがあった。
清潔感のあるハーブの香り。
その匂いを漂わせる泡で全身を洗いながら、先生と同じなんだって……どうしてか妙に気恥ずかしくなって慌てて泡を洗い流した。
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