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チャビは喜び庭駆け回り、凪桜はコタツで丸くなる(16)(side 真誠)
お風呂にちゃぷんと身を浸しながら、凪桜さんが身体を洗う姿を眺めた。
綺麗な人。俯いて洗い髪が頬に掛かって陰を作るだけでも美しい。
どうやら段ボール箱に詰めて送り返されることはなさそうだけど、手足を切断して大きな瓶に詰められる日も来ることはなさそうだ。
「そんな刺激がないと興奮しないなんてつまらない」なんて、いい台詞。甘く愛しあい睦みあう二人の将来が見える。
同じ浴槽に身体を沈めて、ふうっと息を吐く凪桜さんのうなじを見る。身長差の都合で、俺の唇の高さにうなじがあった。
うなじってエロいよな。人間の急所のひとつだからかな。
俺は凪桜さんを背後から抱き締め、ゆっくりうなじへキスをした。
「凪桜さん、愛してる」
凪桜さんと駅伝を見て、雑煮やカレーを温め直しながら食べて、ふたりの関係も温め直しながら暮らして、それぞれの仕事に打ち込めたら、それが一番いいんだと思う。
凪桜さんとチャビ様とずっと家族でいられたらいいなとは思うけど、それは薄い和紙を重ねていくような日々の積み重ねでよくて、毎日『うわぁ、この人本気で駅伝が好きなんだ!』と驚いたり、『実はコイツ相当なドMなんだな』とドン引きしたり、そんなことを心の中で思ったり、ちょっと口に出したりしながら、ずっとずっと一緒にいたい。
一日駅伝を見て疲れているであろう頭皮と首と肩のマッサージをしてあげて、セックスだけじゃない、こういう時間も好きだなと思う。
凪桜さんは何も言わず、俺の手に頭と首と肩を預けてくれていて、何を考えているのか、考えずにリラックスしてくれているのか。相手のことは、全部はわからなくたっていい。わかるところなんて、ところどころでいいと思うんだ。意外なところで長年の些細な誤解がとけて笑い合ったりする未来も楽しみだし。
たとえば五十年後もこんなふうにしていられたらいいな。
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