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庭に咲く花、枯れる花(12)(side 凪桜)

カタカタとポメラをテーブルの上で叩いているニコちゃんに 「忙しいとこごめんね、何か掛けるものあるかな。真誠さん、疲れて寝ちゃったから」 勝手のわからない真誠さんの実家で助けを求めた。 「だらしのないヤツだ、これしきで疲れるとは」 ニコちゃんは押し入れからタオルケットを出してくれた。 「真誠さんを引っ越させちゃって、無理してるのかな」 さっきの電車での会話を思い出し、受け取ったタオルケットをそっと掛ける。 「お兄が好きでやってるんだから気にすることない」 ニコちゃんはまたテーブルに戻って行った。と、同時に 「凪桜さ〜ん、お刺身で食べられないものあるー?」 「食べられなくても私が食べるから大丈夫ぅ〜」 「こっちでお茶飲まない?」 一斉に声が降ってきて、僕はそっと和室の襖を閉めてダイニングに移動した。 「あの、お構いなく。僕はほとんど嫌いなものはないですけど……」 「よかったわー! 手巻き寿司だから好きな物だけ食べてくれたらいいのよ。でもせっかくだから沢山食べてもらわないと。マコがお世話になってるしねぇ」 「マコは何も出来ないでしょう、大変よねぇ凪桜さん」 「お兄は料理できないし」 「やれって言われればやるんじゃね?」 前も思ったけど、誰に返事をしたらいいのか分からなくて 「真誠さんは何でもやりますよ、仕事も料理も洗濯も。僕の生活に合わせてもらってるから大変かもしれないですけど」 なんとなく全員に通じるような答えをしてみる。 「あらー凪桜さんのためならなんでもやるのね」 「好き嫌いしてないかしら?」 「凪桜さんを追いかけて行ったからなぁ〜」 「王子のためならどこまでもーだろ」 また一斉に話し出すからとりあえず黙って、隣に座ってサヤインゲンのスジを取っているレイコさんの手伝いをした。 「ご飯炊けたからそこ空けて」 それぞれが目の前にあるものを避けると、お母さんは大きな飯切を三個持ち出した。大きなお釜からご飯を三等分すると合わせ酢を振りかけ、大きな杓文字をレイコさんと僕に持たせた。 「イチコとニコは扇いで」 僕はお母さんに倣って切るようにご飯と酢を混ぜていく。扇がれる度に立ちのぼる酢の香りで空腹を思い出し 「真誠さん、お腹すいてて気持ち悪くなったのかも」 お昼ご飯らしいものを食べてないことに気づいた。 「そうなの?」 「出来たら起こせばいいのね」 「一人分多く食べられると思ったのに」 「自己管理しないからだ」 僕は真誠さんが今日、家族に会えるのを楽しみにしていたのを知ってるからこのにぎやかな会話も全部聞かせてあげたいと思った。全部思いやりに満ちてるよね。 「ねぇ、マコの小さい頃の写真みせてあげようか」 「え? 勝手に見て怒られないかなぁ」 「大丈夫、大丈夫。結構かわいいんだから」 すし飯を丁寧に広げてから飯切はテーブルから降ろされ、代わりに少し古いアルバムが並んだ。お母さんが広げて僕に見せようと差し出した時、和室の襖が開いた。

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