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EpisodeⅩⅩⅩⅠ
ふにゃり…と唇に、サブが降ってきた。洗濯物の影とはいえここ人目あるから!てか、付き合うって言ってないのになんでキスすんだよ!
「手付金な」
意味が!意味がわからん!誰かー!解説者ぁぁ!オレは心の中でじたばたともがいた。触れるだけだったけど、サブの緊張が伝わってオレもなんか緊張してしまう。
「どっ、同意してねぇし!」
思わず口に出た言葉に、サブはふはっ吐息が抜けたような笑いを漏らした。けどさ、前置きなしにキスとか有り得るのか?いきなりだぞ?その前に付き合ってねぇし!
「吉田のその真っ赤な顔は同意にしか見えない…押してもダメなら引いてみて、吉田も少なからず俺を必要としてくれてるのはわかったから」
いつ必要と言った!?そして、押してダメなら引けとか!アレは策略か!?オレは罠に掛かったのか!?
「百面相…俺は男との恋愛になんか嫌悪されてるのかと思ってたけどさ、そんな感じしないし?もっと押していいんだなってわかった」
「かっ、勝手に分析すんなよ!」
「ほら、そこのベンチ座ろう」
サブの指さす方に、外に向いて置かれたベンチが何個か並んでいた。柵は高いけど隙間からちゃんと空が見える。
オレの体力を考えてくれたんだろうか…いや待て違う!これもサブの罠かもしれない!そんな事を考えてたら、横に座ってオレの手を…握るな!
ペシッと払い除けてもすぐにまた握られた。
「俺の名前は、山田 …山田精志朗 」
「…用務員と同じ名前だろ」
「うん、リアルの名前かもわからないだろ?だからさ、これからは本当の俺を見てくれよ…イケメンでもないし、カッコイイ事も出来そうにないけど」
この手を握ってるのは、なんの意味があるんだよ…ったく。
「オレの名前は…って、知ってるか」
病室に何度も来てるし、親はオレを名前で呼ぶ。聞いていないわけが無い。と思ったら、ジッとこっち見てる!な、なんだよ!?
「名前…知ってるけど本人からは聞いてない」
「ぅ…わ、わかったよ!吉田晴也!これでいい!?」
鼻息荒く言えば、頭を上下させてくれたからとりあえずはこれで満足行ったんだろうと思う。
「よろしくね、俺の大事な晴也」
呼び捨てかよ!これ、まずいパターン絶対気がついたらいつの間にか恋人となってそう。そうは思っても何故か悪い気はしなくて、そっと手を出した。サブの不思議そうな顔にオレは舌を出してさらに手を出す。
「握手?」
「そ!」
オレの言葉に従い、サブが手を出したから、その手をギュッと強めに握る。こいつがオレの今までを左右してきたんだ、おれが多少振り回してもめげない強さもあるように思う。
「よろしくな!ダーリン」
「ほぇあっ!?」
情けない変な声を上げながら慌てるサブを見て笑いが込上げる。こんな楽しい感情なんてゲームの世界ではほとんどなかったな…絵文字とかでどうにかなってたけど…きっとサブがもっといい世界をオレにみせてくれるそんに気がする。
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そしてオレは無事に退院を迎え、初登校の日だ。学校では色々と世話になった山田弟がいると聞いて、ちょっと楽しみだった。
「迎えに来たよー」
1台の車がオレの家の前に来ると窓が開きサブが顔を出した。母さんもぺこりと頭を下げる。
「山田さん、晴也をよろしくお願いします」
そう言って母親は頭を下げたが、本当サブはすごい。怪我を負わせた本人がここまで家族に信頼を得たのは、一重にサブの頑張りだ。
ひたすら謝罪し、毎日見舞いに来て、親を落とした…それを母親から聞かされていたからオレがこの男の恋人と言われる日もそう遠い話じゃないと感じている。
「いってきます!」
東陵へ向かう道を車で送ってくれるサブに感謝し、校門近くの道路で車を止めてもらった。
窓を開けて、手を振るサブの嬉しそうな顔に思わず…頬にキスを送って逃げるように校門へ向かう。
背後からうおおお!!!と、野太い叫び声がしたが気のせいだろう。
ここから、オレのリアルが始まる。
END
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