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EpisodeⅩⅩⅩ
それは思いもよらぬ謝罪、そしてサブは病院へ姿を現さなくなった。
届くのは赤い花。それが毎日サブの手により運ばれて来るが、オレの部屋には足を踏み入れなくなった。
オレがサブに何をしてしまったのか見当もつかなかったし、最初は忙しいのだろうと思っていたんだが、必ず赤い花が届く。余談だが母さんがこの花はポピーと言う花と教えてくれた。
リハビリが進み身体を起こして結構長い時間歩けるようになっても、サブは花をただ送ってきた。看護師さんには挨拶とオレのリハビリの進み具合を確認しているらしいけど、なんか腹たってきた。
だからサブが来るのを夢の中で待ったが、来やしない…となると実力行使しかないよな?オレはなんで避けられてんのか心当たりなんか全くない。
いつも来る時間は大体ではあるが読めてる。看護師さんが花を持ってくる少し前だ。オレは病室を抜け出して1階へ降りたが、人が溢れててなんか怖いから、エレベーターホールで待ち構えることにした。
看護師さんがバタバタと忙しなく駆け回ってる姿をみて、そう言えばこの病院の中は今の病室とリハビリ室しか行き来してないなと思い至った。サブに会えなければ、屋上にでも登って外の空気を吸うのもありかもしれない。
そんな事を考えながら壁にもたれかかっていたら、階段から人が上がってくる気配がして、壁に預けていた体重を両足にしっかりと乗せた。
「あっ…」
目が合ってすぐその一言が飛び出したかと思ったら、今度は目をさっさと逸らして、バツの悪そうな顔をしていた。
本当にコイツは何がしたいんだよ!避けられてるのはオレ自身1番よくわかってる。だが、理由が全くわからないんだよ。
「あからさまに避けてる理由を、5文字で答えろ」
「避けてなんて…」
「はい、6文字です!もっと簡潔に!」
オレが睨みながら言えば、サブは深い溜息をオレの目の前で吐きやがったぞ!?なんだよ!面倒臭いのかよ!
そう思いながらも、ちょっと心做 しか寂しさもある。なんなんだよ…泣くぞ!?いいのかよ!オレ、ギャン泣きするぞ!?
「アレだ…その、あのさ…」
ここまで来て言う気がないのか!?ケツの穴の小さい男だ。と言いたかったが堪えた。なにせ、サブだし。オレの中ではサブはオレを気に止めてくれた感謝もあるし。
「なんだよ…ハッキリ言えばいいだろ?ほんとにオレより年上かよ」
暴言だなとは思ってもさ、ゲームの中で散々こんな口調だったから、簡単には治らないんだよ!すまん…
「あの後…背中向けてこっち向かなかったろ?」
あの後ってなんだよ!?不思議に思って首を傾げながらサブを見たら、サブの目は…死んだ魚みたいに生気が失せていた。いやいや、待て待て!そんな記憶…あ!あった…
「アレは、尻の間からオレの粗末なのが見えたかも知れないと…それと、ちょっと恥ずかった…」
「えっ!?」
「えっ!?」
2人して壮大に驚いた。サブはプルプルしながら両手をオレに向けてくるから、思わず避けた…だって、なんか危ない人みたいだろ?
「ほ、ほら!避けたじゃないか!俺はそんなにキモイか?」
「いや、キモイというより…コワイ…なんでオレにそんなプルプルして近寄ってくるんだよ!びっくりするだろうが!」
「仕方ないだろ!好きな人には普通こうなるんだよ!」
「いや、普通がわからん!」
「なんでだよ!」
なんか口喧嘩みたくなって、2人ではーはー息を吐き出しながら言い合ってたら馬鹿らしくなってきた。
そしてサブがフッと笑う。その笑顔がなんか思ってたよりカッコ良く見えて、少し顔が熱くなる。
「好きだと、そう言っても気持ち悪くないか?」
男同士という事か、それとも自分の身の危機かは判断付け兼ねるが…そうだな。
「案外平気…前からそれは聞いてたから」
ただ本気の思いかは計りかねてたけど。けれどそこに嫌悪感がないのは確かだし、避けられる方が嫌だと思った。
「俺に見込みはあるのか?」
「なんの見込みだよ」
「恋人ポジ」
グイグイ来るな…サブは肉食系男子か!?オレも草食系ではないけど、喧嘩したと思ったら仲直りしてその勢いで今度は告白かよ。
「今はサブが近くにいて…嬉しい。ただそれが恋愛感情なのかと聞かれたら、わからん」
「なら、お試しで付き合お!?」
「いや今はオレに怪我させたって罪悪感とかそういうので、変な気持ちになってるかもだろ?」
少なからずあると思わないか?ほら、気にかけてたから、それが当たり前になって恋愛感情と勘違いしちゃう的な…
「その時期はとうに過ぎてるよ…なら、覚悟して?そして俺と付き合ってもいいと思ったら、ちゃんと言ってくれ」
え?どういう流れか…え!?なんでサブこんな近いの?え!?え…
ええっ!?
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