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13-銀の飼育日記④

マッドネス地下実験施設に突如けたたましく鳴り響いたサイレン。 恐らく魔物か実験体が逃げ出したのだろう。 頻繁にあることなのでマッドサイエンティスト達は各ラボでいつも通り独自の研究に意識を戻した。 銀も最初はそのつもりだった。 が、一人遊びしていたはずのみるくの姿が周囲になく、通路への扉が細く開かれているのに気がつくと。 ほにゃららの臓物解剖を中断して血塗れの白衣を翻した。 「みるくーエサの時間ですよー」 何重ものケーブルが伝う薄暗い通路に銀の声が響く。 どこからか持ってきた鍋を、どこからか持ってきたすりこぎでがんがん叩くという騒音を伴って。 はぁ、いませんね。 よちよち歩きでそう遠くに行くこともないとは思いますが。 ひょっとしてグラが連れ去りましたかね……でもそれならば騒ぐはず。 はぁ、やっぱり首輪とリードをつけた方がいいでしょうかね。 銀が平然とアブノーマルな思考へ傾いたとき、それはそれは恐ろしい咆哮が曲がり角の向こうから聞こえてきた。 今のはどう考えてもみるくの鳴き声でも腹の虫の音でもないですね。 「やれやれ、誰かの不始末を僕がつけなきゃならないとは」 鍋とすりこぎで何とかなりますかね、と銀は肩を竦め、問題の咆哮が聞こえてきた曲がり角を曲がる。 そこにいたのは。 紛うことなき鮫だった。 海生から陸生に遺伝子を組み替えられ、宙を泳ぐ、肉食獣だ。 その外見に違わず凶暴な彼はいきなり現れた銀に急カーブを切って突っ込んできた。 するりとかわした際、銀はとりあえずすりこぎで鼻先を殴打してみた。 「ふごぉ!!」 効果てき面、鮫は巨体を仰け反らせて黒々した眼から涙を迸らせた。 方向転換し、きっと銀を睨み、再び突進してこようする。 その時。 「ままー」

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